わたしが死んだ後に
なかがわひろか
わたしは死んだ
あんたはさぞかし喜んでいるやろう
あんたは周りにいっぱい女の人こさえて
家にも帰って来うへんで
月に一回お金だけ落としていって
なんかの義務みたいにわたしを抱いて
それでまた他の人んとこ行って
こんな日いでも
あんたは悲しい顔しながら
心の中では次は誰と一緒になるか
考えてるんやろう
あんたみたいな男にひっかかったんも
それはわたしのせいや
別に恨んでる訳やない
あんたはあんたで
好きなように生きたらええ
あんた最期
わたしの顔触ってくれたな
知ってんねんで
出棺の前に隠れてわたしにキスしたん
一瞬やったけど
何年ぶりやろな
あんなキスは
恥ずかしいけど
ドキドキしたわ
あんた次誰と一緒になるんやろ
お金散々遣ったあのお店の子か
わたしの昔からの親友か
別に誰でもええんやけど
あんた泣いてるなあ
なんか今日一日
泣いてるなあ
次の日も
次の日も
あんた泣いてるなあ
ご飯食べえな
女の人のとこ甘えに行きいな
みんなきっと優しいしてくれるわ
あんたまだ泣いてるなあ
四十と九日経ったら
わたしはもう戻って来れへん
あんたのふざけた毎日を見てやろうと思て
ふらふらしてたんやけど
あんた泣いてるなあ
他の女のとこに浮気して
作った晩御飯も食べへんで
せやけど近所の人にはええ旦那やて愛想ふりまいて
それでしゃあないと
そう思てたけど
わたし気いついたわ
わたしあんたの悲しい顔見るん
一番嫌いやわ
あんた毎日毎日泣いてる
誰が来ても
誰から電話鳴っても
あんたには聞こえてへん
あんたわたしが好きやってんな
あんたわたしが死ぬほど好きやねんな
ごめんな
もうすぐ時間や
毎晩帰って来うへんでも
全然心配ちゃうかったのに
もう見ることのできへんあんたが
心配や
たまらんけど
神さんが決めはったルールを破る訳にはいかへんねや
先
いくわ
ごめんな
元気
出してな
ほなな
好きやで
(「わたしが死んだ後に」)
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