ボックス席の女
ネット詩の悪魔

金曜の夜9時半
僕は駅前のファーストフード店にいる
三階の禁煙ゾーンのカウンターに一人座り
ストローでアイスコーヒーを啜りながら
僕は見る
角のボックス席に座る一人の女

彼女の後ろの壁はクリーム色で、その頭の上には
パネルが架かっている
ハンバーグが鉄板の上で油をはね上げている
食欲をそそる写真
肉がジュージューと焦げる音まで聞こえてくるような
臨場感に溢れた
彼女の座るソファは薄いグレー
テーブルは白
その白いテーブルの上には茶色いトレイ
ハンバーガーを食べ終えた後の水色の包装紙が
くしゃくしゃと丸くなり、ポテトの赤い容器が
放り出されたように転がっている
ソファには黄色いビニール袋
赤い文字で何やらアルファベットのロゴが入っている
彼女が着ているのは長袖のティーシャツで
白く、袖が緑色だ

席は空いている
二〜三組のカップル、二〜三組のグループ、二、三人の男
それでも店内は騒々しい
人々の話す声と、スピーカーから流れるBGM
彼女は長い黒髪の先を、一本一本丹念に点検しているように
僕には見える

彼女をちらちらと眺めながら
僕は心の中で叫ぶ
俺は
エドワード・ホッパーだ


自由詩 ボックス席の女 Copyright ネット詩の悪魔 2007-02-01 00:26:01
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