わたしは詩のなかで
砦希(ユキ)
わたしは詩のなかで
一本の木になることができる
地に根を張り
そこにい続けることができる
少女が来て
本を読んで
少女は帰ってゆく
わたしは詩のなかで
そらをとぶことができる
高い高い鉄塔から
まっすぐに飛び立つことができる
そして落ちてしまう前に
目を覚ますことができる
わたしは詩のなかで
あなたを愛すことができる
たとえば大嫌いな
顔も見たくないあなたを愛すことも
たとえばどうしようもなく
大切なあなたに愛されることもできる
わたしは詩のなかで
夢を見ることができる
ねむれぬ夜に
穏やかでやさしい夢を
見ることができる
そしてわたしは詩のなかで
それでも抱えきれぬ想いに
胸を痛める
わたしは詩のなかで
一本の枝になることができる
その枝は木から離脱して
飛び立つことができる
いつの間にかわたしは
鳥になる
そして少しだけ啼いて
この夜の終わりに朝を告げる