『台風、ん』
川村 透

 空を見上げたら青い渦の底にいる、
 ことに気づいた。目だ。
 背を押されて飛ぶように駆けつづけて来た僕、は
 たたらを踏む
 水色の傘につかまっていた指も楽になって
 水たまりの端を踏むスニーカーずぶ、濡れ
 の足元の鏡に映る空の顔色、
 を背負って立ち止まる。


 いつしか風も弱まり僕の体は雨から自由になっていた。
 僕は「台風」を、生きてきた、
 ことに気づいた。真っ只中なんだ。
 しん、と草むらが陽光に濡れ、揺れ、ひとしきり水滴を散らす
 でも、あの雲の塊はまだ終っていないと
 僕の後ろ頭の、高い木の梢あたりで、もう口笛を吹き始めた。
 僕は「台風」を、駆け抜けて来た、
 ことに気づいた。まっすぐにだ。
 目だ。
 仰げば睨む目が、轟いて力を溜め
 胸一杯に雲をふくらませて日が陰ってゆくところなんだ。
 水が匂う、来るんだ。
 だ、め
 だ
 まだ。
 もう少し待って、
 Typhoon....
 、ん。



 いつしか風が強まり僕の体はあの雲の塊から吹く雨に
 もう、
 さらされようとしている。
 Grow Grow
 耳たぶを、台風、が、
 さわった。
 Blue Blue
 口笛を真似て、僕は水色の傘と
 歩き始めた。


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【Notes】
99/09/25 ver1.04 ///99/09/27 ver1.09 //2003/08/10ver1.10改訂
■Say "Good-bye !" to Typhoon
2004/10/21 青空に乾杯。
「台風の聲ゆあーんと聞こゆサーカス来ぬ」




自由詩 『台風、ん』 Copyright 川村 透 2003-08-09 11:25:14
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