第十六次シュークリーム潰れちゃった戦争
ロカニクス

何故なら彼らはひとしずくの馬鹿だったからです
何故なら理由などいらないからです

「怖い」という言葉が似合わない馬鹿どもだったからです


真っ白な平原をカタカタと
おとなしく戦車が走っている
かつては多くの生地を血祭りにあげ
戦争を泥沼に仕立てた必需品も
今ではもうクリームを泡立てる権力すらない

最近ここに赴任してきたひとしずくたちは
透明なヘルメットと軍服と銃や剣を身に付け
お国のためにそこそこ頑張ろうとしている

彼らは色を持ち合わせていないので
言葉で確かめ合う
遠い異国の地では無力とされている騒音を
馬鹿なりに支えあって寄り添う

敵とも言葉で対峙する
傷つけ方が書かれた本は
第三次のときにオーブンの中で燃えつきたので
話したり話さなかったりを試行錯誤し
お互いもう自殺はできないことを教えあう

薄力粉が降ってきたときの惨劇は
塵となって去っていった
それでも生クリームの戦地で涙は絶えない
今日もまたあらゆる負の要因が膨らんでいるのだ

誰もが皆全ての始まりである
「キングムッシュ・オブ・シュークリーム」
を探し彷徨ったのだけれど
白ばかりが広がる洞窟の中で
王者が居る訳が無かった
まるでゲームのように果てし無い結末だった

夜寝る前には
遥か地平線で新しい色が広がり
洞窟に穴が開く
昔その光に誓いを立てた科学者がいた

彼は長引く戦争を終わらせようと強力な泡を発明した
それにより多くの犠牲者が不味くなり
嘆き悲しんだ彼の妻は牛乳の中にダイブし
彼自身も独裁粉によってバターの隅っこに追放された
いつの間にやら教科書にも載ってない

笑顔でいるのは容易いが
見ることも知ることも無い
多分心は持ち合わせてるので
彼らはいつも優しい気持ちで立っている
彼なのか彼らなのかそうじゃないのか分からなくとも

ときどき粉砂糖がキラキラと
天頂辺りで輝いてることがある
彼らの中の一つがときたま
あ、虹だ、と
それを見て言う
皆上を見上げるのだが
いつもそこには甘く柔らかい夕焼けしか残っていない



自由詩 第十六次シュークリーム潰れちゃった戦争 Copyright ロカニクス 2007-01-28 22:54:32
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