新年
服部聖一
年が明けたから新年なのだけれど
「あけましておめでとうございます」のことばが
カチンと一コマ カレンダーでくり上がる
久しぶり 夕暮れに大阪駅で降りると
HEPの赤い大観覧車のすぐ横に
閉じたまぶたのような白い三日月があり
JRの新快速が高架の上をすぎていく
ふと、大阪はひとのまちだと思う
梅田の地下街を歩くと
不釣り合いなカップルが「今日は久しぶりに何かおいしいもの食べようか」
などと話しながら通り過ぎていく
ピンクのミニスカートのどう見ても「おじさん」とすれちがう
そのピンクにはどこかで見かけた憶えがある
ひと ひとの流れていくのをながめていると
たくさんの小さな黄色い矢印が見えた
すれ違っていくことの時の時
もしかすると
時間の粒々に見えないこともない
たとえば今、私が死んでも
何も変わらない時の時
恐ろしいことのようにも思えるし
ひどく幸福なことのようにも思える
たばなりが、カチンと一コマ新しい年になり
そうして誰かが
死んだり、生まれたり、仕事に就いたり、試験に受かったり、
学校やめたり、逮捕されたり
の
小さな粒々が
明滅しながら、何も変わらない時の時
空に幸福な白い三日月