新年
服部聖一

年が明けたから新年なのだけれど
「あけましておめでとうございます」のことばが
カチンと一コマ カレンダーでくり上がる

久しぶり 夕暮れに大阪駅で降りると
HEPの赤い大観覧車のすぐ横に
閉じたまぶたのような白い三日月があり
JRの新快速が高架の上をすぎていく

ふと、大阪はひとのまちだと思う
梅田の地下街を歩くと
不釣り合いなカップルが「今日は久しぶりに何かおいしいもの食べようか」
などと話しながら通り過ぎていく
ピンクのミニスカートのどう見ても「おじさん」とすれちがう
そのピンクにはどこかで見かけた憶えがある

ひと ひとの流れていくのをながめていると
たくさんの小さな黄色い矢印が見えた
すれ違っていくことの時の時
もしかすると
時間の粒々に見えないこともない

たとえば今、私が死んでも
何も変わらない時の時
恐ろしいことのようにも思えるし
ひどく幸福なことのようにも思える

たばなりが、カチンと一コマ新しい年になり
そうして誰かが
死んだり、生まれたり、仕事に就いたり、試験に受かったり、
学校やめたり、逮捕されたり

小さな粒々が
明滅しながら、何も変わらない時の時

空に幸福な白い三日月


自由詩 新年 Copyright 服部聖一 2007-01-26 02:09:22
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