春の雪
まどろむ海月






遠い雲と雫が
まわり舞い

霧の匂いの頁に
痩せた流木が
書き留めた
風の足跡が届く

  さびしさの果てに
  信じるものは何 ?



 歪んだ鏡に
 消えていく郷愁が
 つむがれる夜
 金の糸の踊りのように
 凍える物語は
 ふるえ はばたき
 したたるのです





黒くうねる大海原
すいこまれ 消えていく
果てしない時間


 深くもぐっても
 暗さはますばかり
降りしきるマリン・スノー
宇宙の闇




なんという奇妙な幻想を
逃れえぬ世界と思い
生きているだろう
 事実を選びうる存在でもあるはずなのに



 たとえ知の奥義に触れても救われないさみしさがあり
 世界の目もくらむような美しさがわかっても
 ぬぐえないさみしさがあり



  なぜ?
  悲しみに心を痛ませながら
  悲しみの美しさに惹かれてしまうのは
  苦しみに心を裂かれながら
  苦しみの輝きに惹かれてしまうのは

  青空の向こう
  星々の輝きにも
  それはひそんでいるの?

  満ち足りていることの大きさの中にあるのではなく
  不足していることの大きさの中にあるの?



 憧れを持つ目にしか見えない真実
哀しみの日々の
すべてが報われる
至福の数瞬があり





 ひとつの夢だけを信じてはいけない
 人生は多くの夢で成り立っているのだから





  少女の雪うさぎに
 手のぬくもりの灯
が脈うっている



気づかぬ愛ゆえに
 微かにささやき交わす
  ささやかな潤いたちよ



 よき春の日に

  幸福の頂を見なさい


   幸せ の 思い出 が


  私たちの行方を


 あかるく




  照らしますように





      














自由詩 春の雪 Copyright まどろむ海月 2007-01-25 20:39:03
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