アンテ


風船を慎重にふくらませて
口を縛って
ペンで顔を描いてできあがり
棒にしばり付けて
持ち歩く
やあやあこんにちは
出逢った人たちが
ぼくの風船に頭を下げる
ぼくも
彼らが持っている風船に頭を下げる
気が合った人とは
風船を交換しあって別れ
また新しい風船をふくらませて
口を縛って顔を描く
ずいぶんたくさん
風船を交換したけれど
時間がたつと
萎んでしまったり
うっかり割ってしまって
残っているのは数えるほどだ
棒のほとんどは
ふくらませた風船を縛って
別のだれかに渡ってしまったけれど
それでも
わずかに残った古い棒を
ときどき握りしめてみると
気持ちが落ち着いて
そんな時は
風船の顔も笑っているように見える
よく晴れた午後には
公園に出かけて
持っている風船を全部芝生に放つと
とても楽しそうに
風にあわせて踊る
とても楽しそうに
ぼくやみんなの顔が
草のうえを転がっている




自由詩Copyright アンテ 2004-04-09 01:54:32
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