私達の馴れ初め
愛心

きっかけはくだらないことだった。
私が楽しみにしていた
高級バニラアイスクリームを食べてしまったのだ。

私「何であのアイス食べたん?!」
彼「えっ?うまそうやったし」
私「そんなんが答えになると思っとん?!」
彼「ええやん。また買うてくれば」
私「あれ期間限定やねんで!もう売ってへんねん!」
彼「ギャーギャー騒ぐなや。うっさいわ」
私「うっさいとはなんやねん」
彼「あ゛ーっ、もう知らんっ」

バンッッッ


私は彼の住む、小さな部屋に独り残った。
一気にしーんとする。
急に寒気を感じた私は、紺色のコタツのスイッチを入れると
その中にもぐりこんだ。

『あいつのことや。すぐ戻ってくるやろ』

コタツの中で私は小さなため息をついた。
こんなのは日常茶飯事。
喧嘩して、うやむやのまま仲直りして、また喧嘩して・・・。

『エンドレス・・・・・』

情けなさ過ぎて笑えてくる。
彼とはかれこれ五年付き合っている。
もう恋人から、夫婦に昇格してもいいんじゃないかと思うこともある。
でもこんなちまちました喧嘩をする度
まだ無理かなあ
と感じる。

ほぅっ

小さなため息は白くなっていた。
ふと外を見ると雪が降り出している。
積もりそうな雪だ。

「あいつ、寒ないんやろか」

急に不安になって彼のコートと自分の傘を持つと
上着を持って外に駆け出した。

「寒っ。はよ見つけたらんと」

私は傘を開くと走った。
居そうな所を見つけようとがむしゃらに走った。

『どこ行ってん?!あのドあほ』





どの位走っただろう。
周りはもう雪だらけで、少しでもバランス崩したら滑りそうだ。
もう走る体力も無くなって
ゆっくりと、もと来た道を引き返し始めたときだった。
道筋に生えている木の陰にあいつは居た。

小さなガラスのおわんに降る雪を受け止めていた。

彼は私に気付くと自信ありげな表情で、すたすた歩いてきた。
「あんた、なにしとん?!心配するやろ」
私はそういうとコートをかぶせた。
「アイス作っとってん。かき氷になってもうたけど」
そういって彼は優しく笑った。
「ゆ、雪が食べられるわけないやろ」
「ええから、ちょっと探ってみ」
私は走って熱を持った指で雪をかきわけた。

「あ・・・・・」

出てきたのは真っ白な雪に映える
銀色に光る指輪だった。

「貸してみ」

彼は指輪をとると、私の左手の薬指にはめた。

「ぴったしやな。さすが俺♪」

「・・・あ、ぅあ・・・・・」

うまく言葉にならない。固まってしまった私を彼は優しく抱きしめた。

「なぁ。俺と、結婚・・・してや。
 俺らの喧嘩は日常茶飯事やけど、でもやっぱ隣にお前がおらんと
 寂しいんや。つらいんや。あかん・・・・・か?」

私はこの寒い中、緊張で汗かいてる彼が可愛くて優しく素直に答えた。

「ええよ。ありがとう」
彼はそれを聞くと私の肩に手を置いて、嬉しそうに聞き返した。
「ほんま?!」
私はうなづきながらいった
「ほんまほんま」



彼は私をきゅうーっと抱きしめると大声でいった。
「うおっしゃー!!!」






バニラアイスクリームがキューピッドの
五年目の終結。
私達の馴れ初め。







自由詩 私達の馴れ初め Copyright 愛心 2007-01-24 20:07:29
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