痛み
バンブーブンバ

脛に向かって
鮮血はほとばしる
痛みについて
想い始めていた
小学2年生のころ
遠足のお弁当は置かれていた
蒸気したアイロンのかたわらに
星型のニンジンに見とれてしまって
二の腕に三角形のケロイドをつくった
母親はきゃーきゃーしていた
わたしは何が起きているのかわからないのか
右腕を体と直角にたもったまま
しばらく垂れ下がるやわらかいものをながめていた
まんなかに直径1cmのまあるいつるつるの皮膚を残して
痛くはなかった
その証拠に
包帯巻いて
よみうりランドへ元気よく出かけていったもの
彫刻刀で
巾2mm長さ2cmの傷を自らつくった
中学1年生の頃だった
これは痛かった
胸の方がどきどきするほど痛かった
自分からつくると
どうしてこんなにも痛いのだろう
痛さに信頼を置けなくなってきていた
そうして
他人に傷をつくる機会を得た
ケンカの理由は覚えていない
ただ
そばにあった三菱のシャープペンシルの先を
甲にぶっさしてあげた
もちろん手先だけでなく
膝がガクガク震えていた、と思う
野次馬の友だちによると
しばらくシャープペンシルのあたまをカチカチさせて
芯を5cmぐらい出し続けていたらしい
肉片がこびりついていて
染められていた先から
煤けた芯を見つめていたようないないような
覚えていない
下唇がドクドクしていた
いつのまにか
2針縫った
だから、痛くない
お嫁にいけないといわれた
そっちのほうが痛い
5年前
正式に切り刻まれる機会を得た
ザリザリ振動だけ伝わってくる
ゴルゴルというのもあった
半身だけ感覚があるというのは
やっかいである
このザリザリとゴルゴルは
残りの半身がこの世に戻ってきたときに
どんな痛みをつれてくるのか
検討もつかなかった
想像するという痛み
それでもモルヒネで茶化される
未だ痛みの底をしらない
自転車が横転して産まれた右ひざの傷を眺めている
眺めながら
痛みの時間を
想っていた






自由詩 痛み Copyright バンブーブンバ 2004-04-08 21:51:35
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