もてない
しゃしゃり

もてない男が集まって
深夜のファミレスで話した
しみじみとふかぶかと話し込んだ
夜も更けて
やっぱりぼくらはもてないままだった

『もてないことのかなしみは
近代的な発明にすぎない』
『おれたちは貴族ではない
だれでも恋愛できるわけじゃない』
『前近代に生まれていれば
おれたちのかなしみはただ
はらがへったとか
いくさには行きたくないとか
そうゆうぐあいのものだったにちがいない』

だが食欲は満たされ
戦争はすでにフィクションだった

ぼくらはもてたいわけではなかった
ただほんとうのなにかがほしかった
それは愛ではないのか
愛でなければ愛でなくてもよいのだけれど
それは愛ではないのか
ぼくたちの愛した女たちは
だれもそれを与えてはくれなかった

とてもいい奴がまた
失恋した
ぼくらはそいつの話をとことんまできいたとも
そいつは
目の前で
愛した女が他のつまらない男に抱かれるのを見たのだ
そしてその場でげえげえ吐いたのだ

ぼくらはみな泣いた
しみじみと
ふかぶかと泣いた
愛なき世界にもファミレスはあかるかった
コーヒーは何杯飲んでもうすいままで
ぼくらはいつまでももてないままだった







自由詩 もてない Copyright しゃしゃり 2007-01-23 18:38:25
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