猫の神様
及川三貴

透明な針が刻んで
苦しげに 身近な
皮膚が縮んでゆく
冷たい大気がやって来て
窓を揺らしているならば
あなた 目を閉じなさい
物憂げな静けさが
決して積もることなく
降り続ける こんな夜に

 堤防沿いを歩いて
 排水路の影から
 海を見ていた あなた
 夕闇が歩けと急かして
 小石を拾って握りしめた

 どこかを歩いて
 欠伸を海を渡る
 朝達に問いかけているなら

 朽ちた手すりの階段を
 下って 開けた磯辺で
 あなた私の放物線を観てた

帰ろうよ
帰ろうか



自由詩 猫の神様 Copyright 及川三貴 2007-01-17 22:44:52
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