こん

  (母に手を引かれて歩いていた幼い「私」は
   母になにかを言いたかった でも
   母の耳ははるかうえにあり
   声が届かない気がして
   またうつむいて 光るアスファルトを見ていた
   おかっぱが揺れていたんだろう、
   母が手を ぎゅっと握った)

       *

   夕飯の買い物に行く途中
   君が手をつないでくる
   やわらかくしめった
   もちもちの手で


   うつむいて道を調べながら歩く
   君の ぼんのくぼを見て思う
   未来を


   何年かすると この手は
   さらさらと冷たい
   少年の手に変わっているのだろう
   その時々で君の成長は嬉しいよ
   でもほら 空のうえ
   未来から時を超えてきた「私」が
   君を見つけて
   懐かしさに胸を しめつけられている
   もう おばあちゃんになってしまった
   「私」が


   君も その頃
   お父さんになっているだろうか
   そして我が子の
   ちいさな もちもちの手が
   いとおしくって
   いつまでも いつまでも
   にぎっていたいと思うのだろうか


   そうして
   しわくちゃになった
   「私」の手は


   かさ、こそ、と
   いとしいものたちに
   小さくサヨナラを
   告げるのか











自由詩Copyright こん 2004-04-07 13:31:34
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