メルヒェン
鏡文字
遠い国で鳥があの娘を
拾って育てる
鳥はあの娘に名前をつける
あの娘は鳥に名前をつけることを考えている
鳥はあの娘に
おいしいお粥を作らせる
あの娘は庭のいちじくを
鳥にもいで来させる
森に夜がやってきて
梟がミサの時刻を告知する
あの娘は箒にまたがって
鳥を恐る恐る笑わせる
きのこを見つけて
樹液を探って
魚を捕らえて
二人はそれらを分けあって食べる
遠い国で鳥があの娘に
名前を付ける
あの娘は鳥に相応しい名前を見つけられないまま
幼くして死んでしまう
鳥は死ぬまで
あの娘の名前を呼び続けた
僕らの国の言葉では
表記できない発音で