時々
霜天

足音が
大勢の中に還っていく時
遠くで自転車は雨音の中に忘れられている

少年が
少年のままで頭を下げながら生きていく
そんな時々、あれは私たちが作り上げた
屋根や壁や、縁の無い窓
遥かな国、と名付けて目を逸らした
とてもとても深い空の色と同じ目をして
静かに、耳を塞ぐ時
私たちの言葉の縁は、どうにも丸くなってくれない


夕暮れる時々
私たちが私たちのように
優しくなれますように、と繰り返し祈る
ブラウン管の向こうでは、明日も雨ですと嘆き顔で
どこかで心穏やかで
どうぞ平らに
どうぞ平らでありますようにと
貼り付けるように、その時々
いつか私たちの落したものが
降り注ぎませんよう
滑るコインの裏表が
どうぞ分かりませんように
同じ顔で笑う時
いつも、その時々


足音が
今もそこに在ります
巡る声は還ってくるので
朝焼ける時々
祈り、祈る時々
いつか忘れたことさえも
生きていけますように
生きて在りますように


自由詩 時々 Copyright 霜天 2007-01-15 01:19:07縦
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