yoshi

扉を開けて駆け出す

だってあなたが逃げるから

灰皿を蹴飛ばしてしまって

灰が宙を舞う

雪のように宙を舞う

だけど女は

追いかける

だってあなたが好きだから


あなたの残していった

忘れ物に気づいたけれど

そのままにして駆け出した

だって戻ってきて欲しいから

それがあれば

戻ってくると思ったから


全速力で駆け出して

ずいぶん走ったけれど

あなたの姿が見当たらず

女はしょうがなく戻ろうとする

携帯電話の彼の番号を

何度もダイヤルするけれど

電源が入っていないと

携帯電話から女の声がしつこく言うから

イライラしてしまう



彼は私のことを

キライになったのだろうか

なぜ部屋を飛び出したりしたんだろう

今なら仲直りしてあげるのに

どうして携帯の電源を切るのだろう

彼は私のことを

キライになっているはずは無いわ

あんなに愛してるって言っていたし

何百回も愛し合ったもの

きっと明日には戻ってくるわ

仲直りのしるしにあの店のケーキを買って

そしたら許してあげなきゃ

とにかく落ち着いて

待ってみよう


女はそうつぶやいて

最後のタバコに火をつけた

携帯電話を握ったままの指は

今も彼の番号をダイヤルし続ける




自由詩Copyright yoshi 2007-01-14 10:23:15
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