ある日のことでした。
空に住む太陽君がふと下を見ると
可愛らしい雪の子が遊んでいました。
ドキン!
太陽君は赤い顔をもっと真赤にして
雲の陰に隠れてしまいました。
「危ない危ない。ずっと見ていたら
僕はあの雪の子を消してしまう」
太陽君は、冷たい雪の子や雨の子を見続けると
その子を消してしまうのです。
太陽君はもう一度、雲の陰から雪の子を見ました。
楽しそうに遊んでいます。
雪の子は太陽君に気付くと、にっこりと笑いました。
ドキンッ!
太陽君はシュンっと隠れました。
身体中が真赤でドキドキしています。
『あの子は消してしまいたくないなあ』
太陽君がそう思っていると、乱暴者の風男がやってきました。
風男はめちゃめちゃに、雪の子を振り回して遊び始めました。
雪の子は苦しそうに泣いています。
太陽君はそれを隠れて見ていましたが
ついに怒って出てきました。
「やめろ!雪の子を放せ!」
風男は太陽君を睨むと、雪の子を放り投げました。
「きゃっ!」
雪の子は怪我をしてしまいました。
太陽君は雪の子に急いで近づくと、自分の体温を一番低くしました。
「大丈夫?ちょっと熱いけど我慢してね」
そう言って、怪我しているところを優しく消毒しました。
「あ。ありがとう」
太陽君は雪の子に優しく笑うと
風男のほうに振り向きました。
太陽君は風男を睨みつけると、低い声でゆっくりと言いました。
「消えろ。大火傷したくないならな」
風男は悔しそうに舌打ちすると、ヒュンと逃げていきました。
雪の子は太陽君に、てててっと駆けて来ました。
「太陽君。ありがとう」
そう言って太陽君をじっと見つめました。
「見ちゃ駄目だ」
太陽君は恥ずかしそうに顔をそむけました。
「何で?」
雪の子は悲しそうに聞きました。
「見つめると僕は、君を消しちゃうんだ」
太陽君は悔しそうに言いました。
「そんなの知ってるよ」
「へっ?!」
太陽君が驚いていると雪の子は
笑顔で言いました。
「太陽君。消えるんじゃないんだよ。
お空の雲に変わるだけなんだよ」
「でも僕は、君に雲になって欲しくない」
雪の子は少し悩んでいましたが
思いついたように太陽君に抱きつきました。
「なっ、なに?!」
「ぎゅーなら消えないんだよ」
「ホント?」
「本当」
太陽君は安心して、雪の子を抱きしめました。
『あれ?寝ちゃったのかな』
太陽君が起き上がると、雪の子はいなくなっていました。
!?
太陽君はもしやと空に昇ると
雲の塊を見ました。
「いた」
雪の子が可愛い寝顔で、塊の一部になっていました。
太陽君は愕然とした表情で、しばらく塊を見つめていました。
「わかってたんだね。ありがとう。またね」
太陽君は泣きながらも
雪の子の頬に、優しくキスをしました。
太陽君が帰ろうとすると、雪の子の声で
嘘ついてごめんね。またね
と言う、優しい声が聞こえました。
太陽君は振り向くと、ゆっくり手を振りました。
またね。