冬鳴 Ⅱ
木立 悟




窓を揺らす透明を
娘たちの時間はすぎて
雪のなかの双つの道
どこまでも淡く
双つの道


青に添う手
剥がれる陽
いとおしさ 望みのなさ
左の目にだけ降りそそぐ


窓かこむ窓
空に着き
置き去りの想い出をひろげれば
雨はかすかに遠のいてゆく


海鳥が河をさかのぼり
雪に沈むわたり鳥
人に到かぬ人の泣き顔
水の足跡をすぎてゆく


雪と同じ大きさの
鳴ることのない楽器が降りつづけ
触れれば溶ける笑みたちを
羽は濡れながら抱いている


誰もいない家 雪あかり
うたはひとり照らされて
原をすぎる風を見た
どこまでも淡い道を見た


窓めぐる窓
空から離れ
左目を静かに閉じるとき
眠りについた鳥の羽には
鳴るはずのないものが鳴りつづけている











自由詩 冬鳴 Ⅱ Copyright 木立 悟 2007-01-13 13:40:57
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