はじめまして
十
17歳の春を覚えている
高校二年の春休みの夜
死に気づいた
いつか死ぬんだ
そう思って
胸が締まって
吐きそうになった
生きたいと思った
僕の意識が
僕のカタチが
すごく大切に思えた
生まれる前に戻りたくなかった
存在していたかった
怖くて
吐きそうだった
18歳の春を覚えている
大体のものの正体は
みんなの感情で
みんなの存在だった
正義が急に不確かになった
世界が小さくなった
詩を書くようになったのはいつだったか
おまえの母と
初めて手を繋いだ日を
覚えている
これは内緒だよ
おまえを初めて抱いた日を覚えている
僕の眼を誰かにあげたいぐらい
全部が全部綺麗に見えた
このままずっと永遠に生きていられるなら
おまえの母と
おまえと
僕だけ残して
世界中の人達が死んでしまっても
いいと思った
あれほど生きたいと願ったのは
17歳の春以来だったかな
僕はあれから
おまえの為に
どれくらい生きただろうか
おまえを初めて抱いた日を
あの綺麗な朝を
覚えている
あの朝
おまえの為なら死ねると思った