2年後、成人式か・・・。
かのこ

いわゆる「イカれたポエム」ってやつを書けなくなった。
いつからかな。抗うつ剤を必要としなくなった頃からかな。
あるいは、レディオヘッドを聴かなくなってから。どっちもかも知れない。
そしてレディオヘッドを最後に、好きなアーティスト自体いなくなった。
チョコレートもあんまり食べなくなった。コーラよりもミルクティーを飲むようになった。
仕事や待ち合わせの約束を破らなくなった。遅刻すらせず、決まった時刻の電車に乗るようになった。
処女を捨てた。淋しいからってすぐ男にすがることもなくなった。夜中に突然誰かに電話をかけたりすることもなくなった。

ところで、初めて詩を書いたときのタイトルや主題を覚えてる?きっかけとか。
あるいは、自分の書いていたものがいつから詩と呼べるものになっていたのかわからないという人も少なくないかも知れないね。
私は一応、覚えてるよ。
きっかけは恋愛絡み。ネット上で、バイセクシャルの女の子に影響を受けて書き始めた。彼女は私を好きだったのだ。
初めて書いた詩のタイトルは「死にきれない奴」・・・みたいなタイトルだったかな。男に振られた未練の詩。
私に影響を与えた女の子はやがて連絡が取れなくなり、私はそれから何人かの男を想いながら詩を書いたりした。
インパクトが欲しくて、長いタイトルをつけたり、破廉恥な言葉使ったり、同じ言葉を繰り返したり
トム・ヨークを思い出して皮肉ばっかり書いたりもした。
鬱で気持ち悪くなるくらいくだらない詩もいっぱい書いたりした。
今も探せばその詩が読めるかも知れない。
青臭すぎて、その場ですぐ丸めて捨てたくなるような代物かも知れないけれど
でも、今思えば、書いてて一番楽しかった。

何処にいってしまったのだろう。
私のイカれたポエムは。ライティング・ハイは。
トム・ヨークの淋しい歌声や、セブンスターの煙は。
チョコレートも、コーラも、二度と返ってこない処女も
繰り返しコールを数えた電話番号も、死にきれない想いも
全部、何処にいってしまったのだろう。

見失ってしまった今。
今でも、詩人だということにアイデンティティを持っている?

一生書いて生きたいって思ったのはあの頃だった。
人生に成功しても、失敗してしょぼくれても、死ぬまで書いて生きたいって思ってた。
子供なりにそこにあった絶望の中で、詩だけは全部許してくれた。恋人以上に信頼してた。

実際イカれて生きる必要性なんかはないんだろう。分かってる。
仕事や人付き合いで、ドタキャンもせず遅刻もせず、決まった時刻の電車に乗れたら多分それだけで充分だ。
大人になれたんだ、とは思わない。ただ、つまらない人間になったなって。
そのことを詩にすることもできずに、毎晩そう思ってから床に就くようになった。
これを書いたからってどうにかなるものでもないな。多分、明日も明後日もこれを繰り返して床に就くよ。そうしてまた時間通りに出勤するから。
ただし、自分の詩にグッド・バイを言うつもりもなければ、そんな勇気もない。


散文(批評随筆小説等) 2年後、成人式か・・・。 Copyright かのこ 2007-01-09 04:41:31
notebook Home