さかさなみだ
夕凪ここあ

真夜中
のどの乾きに目を覚ましコップの水を飲み干すと
小さな波音が聴こえて不安定になる

部屋の隅で水槽は
溺れそうなほど満水で

薄いガラスを軽く叩くと
魚は眠るのを忘れてため息によく似た泡ばかり吐き出す
よく見ると涙にも似ている

蛍光灯の下でいくら泳いでも
どこかに辿りつくことなんてない
ことを知っているような虚ろな濁った目の魚

こんな夜は
不安定な波音が渦巻く水槽を抜け出して
あたらしい呼吸でも見つければいい

そうして夜をやり過ごす
ひとりベランダで
なるたけ低い
星との距離を測りながら


自由詩 さかさなみだ Copyright 夕凪ここあ 2007-01-08 17:15:07
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