作者より：

2006年6月4日に死んだ娘へ

養子です。自分が小学六年生の頃に拾いました
修学旅行から帰ってくると、学校に捨てられてました
引き取るのが一日遅かったら保健所行きだったそうで、先生方に感謝されました
感謝なんか、して欲しくなかった
彼女と生きてみたいと思ったから、引き取っただけだもの

老衰だと、医者は言ってくれたけれども、苦しんで暴れてた姿が忘れられない
呼吸器官に問題が生じて、自分はそれを見抜けなかった
兎にはよくあることらしいですが、悔やんでも悔やみきれなくて、
その頃に自分の体に異変が起きて、まだ、治らない。傷痕は増えるばかり

歴代の兎の中では、最も長生きでした。拾った時に既に2〜4歳だったから、10年ぐらい生きたことになる
最期は自分が看取ることができて良かった。光は本当に、一瞬で消えて逝く。真っ黒な絶望で閉じる
せめて、瞼を閉じさせてやればよかったのに、泣いてるうちに死後硬直が始まって、閉じなくなって
とても可哀相なことをしました。眠るように逝かせてやれなかった

彼女の最期を看取ることができなかったら、
きっと自分は獣医になるという夢の第一歩を踏み出せなかった

歯が伸びすぎるという、特異な兎でした。噛み合わせが悪い兎
上の歯が下顎を貫通しそうで、下の歯は鼻に食い込んで。異名はサーベルタイガー
そのせいで捨てられた模様。ご飯は食べられないし、
獣医さんにお願いすると一回に800円くらいかかります
なので、一度実演してもらって要領は分かってたので、自分で切ってました
父に使わなくなった人間用の骨切り鋏をもらって、パチンと
今でもその歯は残ってます。お守りになってる

そして彼女は喧嘩も強かった。力を溜めた後ろ足アッパーは強烈
弟は足が短いので、思いっきり鼻面に受けて、ショックで二日くらい寝込みました
そんな弟は今年で満14歳。医者には危ないと言われています
心臓と肝臓に疾患あり。自分たち家族は覚悟をしなくちゃいけないのだけれど、
元気そうだもの。って、逃げてしまう。長くないことは分かってる
平均寿命を大きく超えてるし。でも、ギネスに載るぐらい生きて欲しい
ヘルニアにもならなかったのに。まだ元気だよね、ね

一日一日を大事に、暮らしてます。自分はきっと最期を看取れないから
一期一会な気持ちで、一緒に過ごす時間を無駄にしないように

自分は彼らのために獣医を目指したのに、やっぱり間に合わなかった
今後接する命を少しでも多く救えるように、勉強しよう


本文よりも作者メッセージの方がが長いぞ（笑