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旅先で母親に背負われた赤子から
青梅を貰ってきた
長く握々されて熱くなった梅なんか
欲しくはなかったけれど
どうしてもやるというので貰ってきた
いらなくなったからじゃない
奴らは一番好 ....
霧が晴れてゆく
みづうみの奥から
水鳥が生まれてくる
霧がひくのと
同じ速度で
姿を現してくる
水は湧き
風ははしり
みづうみは ....
平原を行く象の群れは
なぜかいつも
夕日を背負つてゐる
象よ
夕日をいづこへ
運んで行かうといふのか
そのゆつたりとした足取りで
夕日を
悠久のかなたへ
返上しにゆくのか
....
山を吹き下ろす風が
水面を撫でる
渓川は波立ち
日が跳梁する
瀬音と光の乱反射
私は川原の石に腰掛けてゐる
振り仰ぐ嶺には
消え ....
荒き野に
異香放てるひとところ
{ルビ頽=くづ}るるばかりの山百合なりき
五月雨のホームに
長く停車する
灯は明々と空きの電車よ
北海に
まなこ鋭 ....
湖に浮かぶ
帆色のとりどりを
ひとつに統ぶる四方のみどりよ
身に余る人の荷を負ひ
ゆく{ルビ驢馬=ろば}の
後ろ姿のほそほそとして
夏山のさ緑の中 ....