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制作方法について:(イダヅカマコト氏による説明を引用)
http://po-m.com/forum/myframe.php?hid=2620
2008年10月13日に秩父・ポエトリーカフェ武甲書 ....
夏の名残を雨が洗うと
淡い鱗を光らせたさかなが
空を流れ
ひと雨ごとに秋を呟く


九月は
今日も透明を守って
焦燥のようだった熱や
乾いた葉脈を
ゆっくりと
冷ましながら潤ませ ....
雨の糸の隙間に
夜は満ちて
ストーブの熱が
そこだけ幸福とでも言いたげに
ほんのり春を創っている

きみと並んで傘をたためば
二人の水滴は
余分な約束事のように散らばって
冷えた ....
秋の空気には
透明な金木犀が棲んでいる


陽射しに晒した腕が
すこし頼りなく感じ始める頃
甘く季節を騙す匂いは
思い出の弱いところを突いて
遠くにいるひとの微笑みだとか
風邪気味の ....
雨が上がると
空気が透明を増して
夏の名残と夢とが冷まされ
水の中を歩くように九月

夏服の明るさが
どこか不似合いになり
息を潜めていた淋しさだとか
熱に乾いていた涙が
堰を切 ....
曇り空に
夏が少し薄れて
鮮やかを誰かに譲った向日葵が
枯れた葉を恥じらうように俯いている

風に混じって遠い蜩の声が
髪を擦り抜けると
秋、と囁かれたようで
逝く夏に何か
何か ....
浜辺に群がる人波が
ひとしきりうねって退いたあと

待ち兼ねていたように
波音は膨らみ
熱を孕んだ砂の足跡も風に消されて
浜は打ち上げられた藻屑の褥(しとね)になる

風が
湿り始め ....
水鏡の裏側からわたしは見ている

黄色い土壁と
くすんだ緑の屋根を
潅木の足元に散り落つ白薔薇を


誰かの足音は
水面に波紋を広げるのだが
雨のひと粒ほどに
まるく響きはしな ....
さびれた歩道橋の上で
夏を見上げると
空、空 
本当に海まで続いているのだろうか


この橋の下を流れる車の群れが
緩やかな河口付近の川だったらいい
時折陽射しに煌めくヘルメットが
 ....
そのとき奇跡を初めて信じた
この世に無駄ないのちの誕生はひとつも無いのだ




あっ、食べたね
その肉はさっきね、
やわらかく やわらかく揚げたんだよ

ああ
カリカリのドッグ ....
ひとたびの雷鳴を合図に
夏は堰を切って
日向にまばゆく流れ込む

其処ここの屋根は銀灰色に眩しく反射して
昨日まで主役だった紫陽花は
向日葵の待ちわびていた陽射しに
少しずつ紫を忘れる
 ....
雷鳴に少し怯えて
ようやく雨が遠ざかると
いつしか黄身色の月が
丸く夏の宵を告げる

湿度が首筋に貼りついて
ついさっき流れた汗を思う

狡猾な二本の腕を
互いの背に回して
策略の ....
めろんの翠が涼しい頃
強引な若さだけを連れて
新しい部屋を探したわたしが
照れながら甦る

必ずしあわせになるのだと
啖呵を切って
飛び出した古い家
裏付けるものなど何も無く
ただ
 ....
雨雲が熟すのを待てずに
落ちてきた水滴は
過ぎた日の埃の匂いがする

名もなき小鳥が
一斉に声を上げて
巣を目指して羽ばたき
一瞬の喧騒を誘う

今日のわたしには傘がない
誰も此処 ....
夜は綻び
朝が死角からやって来る


陽射しが強くなれば
それだけ濃い影は出来て
ありふれた若さのなかに取り残したわたしと
残り時間を失ってゆくわたしが
背中合わせする毎日に
日 ....
空の水がみな注ぐ
水無月ならばこそ
ガクアジサイのぼんぼりに
青色 むらさき
灯りを点けて
こころの内を絵に描いてみる


哀しみ惑う雨模様は
霧雨に溶いた絵の具で
ぼんやり滲んで ....
海と繋がっている

照り照りとした
小さなオパールをつまんだとき
海水の温度のようだった

人いきれにむせる空気の中で
そう感じたのは
単なる錯覚ではなく
この生命の何処かで
潮の ....
梅雨の晴れ間を狙って
そっけなく届いた封筒が愛しい

きみが指を強く押し付けたはずの
テープをもどかしく剥がす、剥がす
剥がすと

草色の便箋に並んだ文字が
少し潤んだ懐かしい声に変わ ....
風が吹き抜ける
うたから零れる水滴に
滲んだかなしみを知る

きみを包む町から
初夏の気配を纏って訪れたうたは
インクの匂いをさせながら
紙を静かに滑り落ちて
こころの中に海を創る
 ....
こんな晴れた日
野の緑はしなやかな腕を
天に向かって伸ばし
陽射しに仄かな生命を温めている

草むらをすり抜ける風は
蜜蜂の
しじみ蝶の
か細い肢に付いた花粉を
祈りに変えて
次の ....
散る散る  ちるらん
花びらの
風に任せた行く先は
夏の匂いの西方か

揺り揺る  ゆるらん
水面に降りて
さざめく海に恋がるるか

思えば君に逢うた日の
宵は海辺に砂嵐
さらさ ....
スプーンの背で潰した苺から
紅が雲に届いて夕焼けになる


静まれ  しずまれ
桧扇を広げて
漆黒がそこまで来ている
上着の釦をもうひとつ閉めて
心して迎えよ

静電気をちりち ....
黒い静寂の隙間から
甘く短い便りが届き
振動はそのまま
片耳から深くに伝わって
封印が容易く解かれる


ひとつひとつの接吻が
蝶になって
夢心地だった恋の日も遠く

雪と降る ....
きっと白に近くあり


霧雨を含んだ夜のなかに
咲き急いだ桜がひとつ
白く闇を破る

陽射しを浴びて
咲き競うのは
きみ
きらいですか

こんな湿った濃紺の中で
意表を突いて ....
春が

     はるが

傘の水滴に溶けて
声も密やに
幼いまるみの春の子に
子守唄を聴かせる


まだ固く木肌の一部の様子で
繚乱、を隠した蕾は
雨にまどろみ
陽射しに背 ....
ももの花
軽い衣に春染めて
緑の枝葉も知らぬうち
蕾のままに頬はほころぶ

絢爛のぼんぼりもなく
錦糸の衣も纏わずに
春の節句の雛つがい
ももいろの
笑みに吹かれて
ひな祭り

 ....
うたを綴る
ひとつ ノォトに
うたを紡ぐ
ひとつ こころに
今日の言葉を装い
明日吹く風を纏う

雲に似て
恋に似て
刻々とかたちを変えるその憧憬を
留めるため

小さな引き出 ....
背なか 背なか
もたれかかった珪藻土の壁には
真昼の温みが宿り
後ろから
春の衣をふうわり掛ける

あし
足もと
埃だらけのズックの下で
蒲公英は蹲り
カタバミが少し緑を思 ....
コートの袖口に
凍った風が刺さり
いつか繋いだ掌を思った

小さな歴史が吹き飛びそうな日には
冷静を乱し
きみ行きの列車に
乗ろうかと考えたりする


枕木に光る足跡を
小さな獣 ....
季節外れのマリーナの隅に
ON AIRのオレンジのサイン
夜はそこにだけピンライトを当てる


思いのほか雪は強くなり
ラジオ局で流す古いジャズが
熱く火照って静かを乱す

厚い硝子 ....
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