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手帳の中で森は
もう少しだけ明るかったろうと
右手の温もりを
むせかえる羊歯の
暗闇からたぐってみる
いつか満たされると思い
満たされたがっていた
月が
ま ....
舗装された道の
ペイントされた、とまれ
踏みつけられた骨の色の
見上げる季節の樹香
舞い散ってへばりつく
美しいという名の死骸
立ち上がれない
ペイントされた、とまれ
月が ....
星の遠めがねを峠に据えて
のぞき見る未来への深淵
みんななぜか震えていたね
体温を奪ったのは
外套をはためかせて
丘を吹き昇る風ではなかったんだ
風のゆくえを仰ぎ見る先に
透明に ....
踏みつけていた
いつの間にか踏みつけていた
{ルビ直線歯車=ラックレール}
きれぎれにされた
人生のように
強さだけを必要とされて
ずっとつながっていました
峠を越えるの ....
鏡に映せない
言葉は綺麗な現象
だから私には
似合わないのです
指をつたう血が
涙と同じ温もり
人の温度と気づくから
生きると言うことは
{ルビ連星=アルビレオ}を見る ....
君はいろいろだね
幾何学を解明しようと
君にキスをしてみる
そのたびに知らないかたち
騙し絵のようで
のぼったりおりたりする君は
いろいろなかたち
そんなことは
説明なんて ....
名残の冬を集めて
風がつくった
春待ち味の
ロールケーキはいかが?
ゆくえをさえぎる雲は
散っていきました
春です
昨日までの私はふるえていました
波に洗われる消波ブロックのように
、ふるえていました
風に吹かれる朽ちて傾いた電柱のように
、 ....
この、聞こえない左耳で
この耳で聴いてみたい音
それは、世界に
あふれる音ではないのです
時間を追い抜いていく時計の刻む
バンアレン帯に太陽風が吹き付ける
海溝の暗闇で深海魚のため息
....
見知らぬ小鳥が
甲高い声で
空にむかって告げたので
今日は見知らぬ春
葡萄の一粒が、私の中の
行ったこともない場所で
裂けて、流れ出す
見知らぬ季節
もう二度と会わない風が
....
枯れ葉を踏みしめていく
君の背のように湿った、足取りで
雪はまだ時間を閉ざそうと
道端で爪を研いでいる
忘れようと辿り着いたのに
捨て去るなと
朽ちかけた木橋が
つららを流す渓流で
....
風車が
巨きな時計のようだ
三つの針を吹雪にまかせて
早回しで、ゆっくりとまわる
うなっているのは
雪を孕んで吹く北風
だろうか
誘導電流を生み出すコイルの声
それとも
ただの ....
浜辺に漂いついた瓶のように
ひとり暮らしの郵便受けに
届いた宛名違いの封筒は
丁寧な文字で
差出人の住所
きっと昔、この部屋に住んでいた
誰か宛の誰かの手紙
なにかの縁だろうと
不 ....
{ルビ朱=あか}くて小さなさかなの
息のように
そっと触れた
てのひらから
あなたを呼吸する
ほんの少し
の温もりが意識を
わたしに繋ぎ止め
る、わたしの体温
....
猛禽となり、風を信じることだ
わがもの貌で空を行く獰猛な鳥も
{ルビ不確か=きまぐれ}な風を信じるから
自由だ
タンポポとなり、風を信じることだ
着地する場所は選べなくても
{ルビ不確 ....
風のための門を
行き来する影がみえる
波を越えて続く
その道を
懐かしさではなく
今日の温度で
凍えるだけ渇いて
鈴の音も響かせず
降り積もる雪の夕暮れ
雲母の肌が 幾重にもはがれていくのです
許されてしまう小さな嘘 をつくたびに
セロファンの音を立てたりはしないのです
涙の ....
宿命でも運命でもなく
それはタンポポ
土手に降りそそぐ
季節の日差しに
僕は目覚める
旅立ちにはもってこいの日だ
風は南南東
ロウソク工場の煙から推測するに
風速は2メートル
....
僕の消えていく闇の名前
石炭ボイラーの匂い
江浦路の路面電車が踏みつける
レールの間で腐っていく{ルビ瓜=うり}の皮
入り口だらけの逃げ場所
擦り切れた人民幣
二十五元五角の片道切符
....
明日を、呼ぶ言葉は
失われてしまった
先程くべた小さな薪が
二人に残された最後の言葉
炎を囲んでいるというのに
横たわるこの夜の湿気は何だ
天赤道上の星の名を詠んでも
横たわるこの
....
冷たい雨の暗がりが
ぼんやりと寂しく誘う
私を溶かし込むには
ちょうどいいおおきさで
ほほにつたう
みぞれの砕けた{ルビ飛沫=しぶき}
雲からはぐれた
それも孤独
いいわけ ....
落日
蜃気楼のよう
だけど蜃気楼じゃない
焼かれるのは
空じゃなく
今日という日の末路
果てるような
限界線
焼かれるのは空
じゃなく
波打ち際
雪に縁取られ
{ルビ烽火=のろし}をあげる夜
松がいい、そうだ黒松だ
沖の漁船
送り雛のように
漁火を灯いて連なる夜
星が海に突き刺ささってやがる
雲 ....
星はひとつづつ
オルゴォルのピンのよう
ゆっくりと巡って
光の楽譜をなぞる
昼に
雪を降らせるのは雲で
夜に
雪を積もらせるのは月だと
指揮棒で譜台をたたく
....
僕らの住処は小さな漁具小屋
呼びあう吐息を波の声に隠し
漁網に髪を絡ませながら
夜の深まりを体温で追った
雪夜の渇いた闇をとかした雲が
入り江を真冬のガッシュに染める
朝の刃を隠した列 ....
数える、シグナル
着信履歴
数える、車窓の鉄柱
サボテンの棘
数える、つたえたいことば
読んでいない背表紙
数える、もらったさやしさ
星のまばたき
数える、蝉の脱け殻
....
凍える桜の枝を煮る
花の色に染まる
記憶のひとひら
なくしそうな
砂のらくがき
ため息で
消して
あなたの指した
電柱の奏でる擦弦楽の季節
手をさしのべても
触れるもの何も ....
セルロイドの筆箱が
カタカタと
そんなふうに
胸の{ルビ襖=ふすま}を揺らす
何気ない言葉
風、もしくは紫陽花
色を移しながら
みんな好きというあなたは
きっ ....
{ルビ香辛料=スパイス}という宇宙なのです
すべてを包括していく宇宙なのです
包み込んでいくのです
溶かし込んでいくのです
カレーに国境はありません
たとえば、カレーまん
インドの ....
街に吹く薄汚れた上昇気流
舞い上がる鳥たちは
自由に見えても
危うい乱雑な流れで
時に墜落する
それは風が裏切ったのか
その美しく夜色の翼を
暗闇の代理人は
タールで固めた道が
....
落合朱美さんのたりぽん(大理 奔)さんおすすめリスト
(179)
タイトル
投稿者
カテゴリ
Point
日付
プテラスピス
-
たりぽん ...
自由詩
13*
06-4-13
踏みつけてふりあおぐ、春
-
たりぽん ...
自由詩
16*
06-4-11
夜空の微熱
-
たりぽん ...
自由詩
11*
06-4-8
駅・軽井沢
-
たりぽん ...
自由詩
16*
06-4-5
鏡のナイフは似合わない
-
たりぽん ...
自由詩
10
06-4-2
かたち、君のかたち
-
たりぽん ...
自由詩
9
06-3-31
冬のロールケーキ
-
たりぽん ...
携帯写真+ ...
15
06-3-30
ふるえて、空_見上げて
-
たりぽん ...
未詩・独白
7*
06-3-28
モノラル、聞いてみたい
-
たりぽん ...
自由詩
12
06-3-28
見知らぬ、春
-
たりぽん ...
自由詩
12
06-3-25
流星雨、私を湿らせて
-
たりぽん ...
自由詩
6
06-3-22
さよなら、風車をまわすもの
-
たりぽん ...
自由詩
11*
06-3-15
あの、手紙は
-
たりぽん ...
自由詩
13*
06-3-12
きんぎょ
-
たりぽん ...
自由詩
14
06-3-8
旅立つ日、君の背に投げる
-
たりぽん ...
自由詩
12*
06-3-5
かよいみち
-
たりぽん ...
携帯写真+ ...
16
06-3-4
送り火、揺らしながら
-
たりぽん ...
自由詩
12
06-3-3
タンポポ、旅立つ日
-
たりぽん ...
自由詩
13
06-2-26
上海1986
-
たりぽん ...
未詩・独白
8*
06-2-26
君は、季節をはずれてしまった
-
たりぽん ...
自由詩
11*
06-2-22
傷、いとしく
-
たりぽん ...
自由詩
10*
06-2-19
夕刻、焼かれるのは
-
たりぽん ...
携帯写真+ ...
28*
06-2-17
おくり
-
たりぽん ...
自由詩
9*
06-2-8
うつつな夜のオルゴォル
-
たりぽん ...
自由詩
12*
06-2-7
うみべの隠れ家
-
たりぽん ...
自由詩
6*
06-2-5
かぞえて
-
たりぽん ...
自由詩
7
06-2-4
それが喩え、だとしても
-
たりぽん ...
自由詩
16*
06-2-3
セルロイド
-
たりぽん ...
自由詩
7*
06-2-2
アルゴリズム_カレー
-
たりぽん ...
未詩・独白
10*
06-1-29
墜落するという方法
-
たりぽん ...
自由詩
8*
06-1-26
1
2
3
4
5
6
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