すべてのおすすめ
遠く
離れたままで
聴こえない
聴くことのできない
あまりにも
薄くのばされた夜
わたしたちは
南回りでまたたいている
天球儀は
魚眼レンズに切り取られ
森の陰影に
ふりがな ....
「夕凪」
遠い昔
粉々になった水平線が
白い海鳥に姿をかえました
白い海鳥の
さいごの羽ばたきで
のばされた夕凪で
ひきよせられる
白い骨
「内緒」
わたし ....
水の匂いのする
あなたの
指先の和音で
おどりだす
初夏の背表紙は
水溶性の文字たちの
ぽつぽつと吐き出す気泡で綴じられてゆく
垂直に
落ちてくる六月の
浸透してゆく
素直 ....
一.
雨あがりの きみの靴は
つま先が いつも
虹のうまれる方角を ながめている
二.
黄のバイエルを
途中でなげだしてしまった
きみの
メゾピアノで吐く息が
ス ....
湿り気を帯びた水曜日の午後
回し忘れた回覧板の中で
『実りある都市計画~その概要』のパンフレットが
気まずい折り目をちらつかせながら
遅々として進まない事業の行く末を気に病んでいる
テー ....
・
揮発性の朝の
つめたい胎盤の上で
藤の花房が ゆれている
・
風にさらわれて
透けてゆく春の上澄みは
背中から咲いてゆく
焦点のあわない花の群れの
ひそやかな発声で
....
春のみちしるべが
ぼんやりと
さくらいろにほどけて
くるり
かすかに温む指さきを
ひきしおの隙間に
おきわすれ
どこへゆくのか
しおさい
水平線の午睡
波の ....