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「アニキ」
「そのサバの味噌煮うまくない?」
うん
「自閉症のアニキ」が最近少し元気になって
おりてきて「居間」で「ゴハンをたべる」
「その春菊の胡麻和えうまくない?」
う ....
列車のベルが心臓直下で響きわたる
蒼白い片道切符を握りしめた駅
朝露で濡れた手は容赦ない
初夏の日、快晴、音楽、赤血球
揺すりあううちに まとめて角がとれて
本能が吹きすさぶ山頂のこの駅 ....
爆破された夜の屑が月の縁を滑っている
そこはどうぶつのように
けたたましく吠える滑走路
無限が限界突破するときのエネルギーを
絶対に忘れたくなくて日記をつける
取り込み忘れて風に揺れる洗濯物 ....
知人の見舞いに桃を持っていったが
急に呼吸状態が悪くなったと
面会はできず
桃は連れ帰った
食卓に置いた木箱のふたを開けると
縦にみっつ並んで
桃たちは姉妹のようだ
血色よく尻を ....
双子だった祖母方のまたいとこはすこし胸が大きい
潤んだ神秘的な瞳は深くて
同い年なのに
大人に見える
意味深な暗号のように念仏がくりかえされるなか
むかし いっしょに あそんだはず ....
真夜中、終電逃してて、窓辺にふいにうかんだ顔、
なんだかもう、流れていってしまいそう、ごめんね。
切りとってみていたい、街あかり、ぼやけた雨の真ん中を、
すこし行きすぎてます、降ろしてください、 ....
いっとき
誰かをおもい
泣いたとしても
朝が来れば
人は顔を洗い
食事をし
読みかけの本の頁を開く
晴れていれば
陽を浴びに出かけ
つばめが巣立てば
ほほえむでしょう
四葉のクロ ....
いま目の前を上り列車がひとつ通過いたしまして、さてさてお集まりの皆々様よ、おんなののろいをみたいとお集まりで、おんなのなみだをみたいとお集まりで、ついでに死ぬおんなや殺すおんな、蛇やら龍やら見せましょ ....
にぶい金色の肌が
冬の陽だまりを
そっとはねかえしている
アルミニウムの
浅い洗面器のうしろに
整列している
こどもたちの
頬はあかく
順番になれば
みないちように
そこへ温か ....
種をまくという行為は楽しい
反面
どこにもいない誰かに
試されているようで
神聖な気持ちになる
この手にある幾粒かは
芽を出さないだろう おそらくは
皆が
花を咲かせるわけではなく ....
やわらカイ貝殻カラかなもじの
ぬるっとした意味うまれる
りょうせいるいかしら
もしかしてしかしら
しらしからぬしかしら
おかしらつきのおかしなしかしら
ナンタイドウブツカシラ
....
東京の地下街から
胸を焦がすような茜空は売ってませんか
そんなことを言ったら 嗤われるだろうが
本当はみんな 自分の町に住む
夕焼け色の切符を手に入れるために
上京しては 行 ....
昼下がりの私鉄は、混んでるでも、空いてるでもなく、ちょうど座席が埋まるくらいの乗客だった。
急行は止まらない駅に停車すると、トレンチコートが乗り込んでくる。
ざんばらな髪。
マスク。
そして、 ....
今朝8時8分にトーストを咥え「遅刻、遅刻!」(ふぃふぉふ、ふぃふぉふ)と口にしながらコートを大袈裟に翻して出掛けたのですよ、ばさっと大きな翼のように。いつもと違って。玄関でいってらっしゃいと見送ってか ....
雪の瞳に映るのは
軽やかな窓
音もなく降る白い彼方の光
ひとつの塔に夜明けが訪れた
沈黙はただ安らぎであるかのように
いつか鳴る(それは予感めいた)鐘の響きを待って ....
喉笛が吹かれて
動物が寄ってくる
空に豆を撒こうとして
油染みた紙袋に
砂利しか入っていないのだと気づく
もうこんなことはやめようか
誰ともなくひとり
ひとりがひとりを重ねて
織り合わ ....
女の人の持っている鞄が気になってしょうがなかった
遠くへ行けば行くほど 鞄を欲しがる様になっていった
ピンクのショルダー
黒のハードな合成革に金の鎖のアクセントの物
軽量ダウン地のブ ....
秋風のなかに
ほんのわずかに残された
夏の粒子が
午過ぎには
この洗濯物を乾かすだろう
通夜、葬儀の放送が
朝のスピーカーから流れて
犬が遠吠えを繰り返す
香典の額を算段して
....
闇の中で物も言葉も色ずくのを止めてしまって
意味を なくしてしまいました
ざあざあとふるのは あめですか ただごとではない音に
あらゆるものが ふるえていました
ごうごうごう 川 ....
あなたは 年老いた家の姿を見たことがあるか
台所からは 骨と皮だけになった皮膚の隙間から
食器と血が 毎日滑り落ちて死ぬ音
骸骨のような運転手になった父が
赤信号のまま 車を通 ....
モリマサ
「もう何もきにしないで今子供作ろう今」
並んで歩きながらいうと「作ろう」だって
真実は現実の中である必要がある訳ではない
平気
部屋のベットに風に吹かれてる歌並べる
平気
ミッ ....
あの爺さんのハーモニカ、粒の無くなった玉蜀黍(とうもろこし)なんだって、
まじか
笑える
サイレンがうなり声あげてとても大きくえぐれているし
物影という会話に闇だけ
浮かび
まくる
僕が ....
真昼も真夜中も
完璧にすべてとか理解してたわけじゃないけど
なんでもいいから何かになりたい
全部とかじゃなくて
ほんのちょびっとの一部でいい
奥さんの地獄がよくわかっている自分は
もうそろ ....
カラフルな 世界で
色とりどりの 夢を見る
咀嚼する 喜怒哀楽
そっくり返った エビが
こんにちは なんて 御挨拶
合間に 挟まった 泥エビも
心地良さげに 自己主張
かなしみをうつくしく飾っておくために
かなしみのかなしみという蓋をそっととじて
ひとりのわたしは
それを花冷えの野に埋める
たとえ
きのうのわたしがそれを掘りかえしても
もうそこにはわたし ....
不意に 口から 出てきて
きみの 襟元に 当てた ことば
ロケットキャベツ
なんだろう
今朝 目覚めたとき まさか この口が
ロケットキャベツを 発す ....
見上げれば 青い空がある
靴の下 地面の底には また地上があり
私からは見えない 空がある
息できる場所で引力に頼って歩く
いつも踏んでる道のずうっと下は
海かな 河かな 山かな
....
夜明けの森を夢見た わたしの閉じたまぶたは
光によってひらかれる あなたの白い
春のような指さきで
わたしのためにあなたは生きていた
わたしが悲しいときははらはらと涙を流した
嬉し ....
行ったこともない月の話なんか聞きたくないし、
会ったこともないモナリザに見とれたりなんかできない。
目の前に広げられた教養と呼ばれるもののすべては、
世界のネタバレだから知りたくない。
....
誕生日
私の多面体の面が
またひとつ増えた
生まれた瞬間は
まんまるだったはずなのに
歳を重ねるごとに
ひとつずつ面が増えて
今では寄せ木細工にも似た
得体の知れない多面体 ....
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