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てんじょうから染め物を垂らし ろうそくと鏡が揺れる小屋の もうとっくに知っている怪談に 肩をよせて聞き入った作法が
いとおしい
夜店のカラーひよこに触れた鮮やかな記憶 金魚を入れた袋の向こ ....
崖地から火葬場を見おろす2階建てアパートに生息した 夕焼けのもらい火が6月の風を駆り立てて死んだ
そんな風の噂
あくまでそんな 何処にも届かない声を追い立てた喉を 震わせて
6月から身を ....
あかるい蝶々のみちにひかれてまだ見ぬ息子がゆれていた
いとけない息子の息をわたしはきいていた
突堤のテトラポッドで男は根魚を釣っていた
その側で片耳の三毛猫がひなたを掘っていた
夏 ....
音楽は子供組が舐める風邪シロップみたいなものなんだって
遠い昔にいた偉い人がそう言ったんだって
いつかのあなたがぶっきらぼうに教えてくれた
わたしは中古の楽器を担ぐあなたについてまわ ....
開け放した玄関はその年の夏そのものだった
わたしはサンダルをつっかけて座り
水羊羹をのせた小皿を手に女をみていた
わたしを産んだ女は真剣な表情で
庭の手入れをいそいそとこなし
と ....
ししいろの鉱物の腹のなかで
わたしは花を摘んだ
夜が瞬きをして
世界が縮小した
額にくる雫
遠くで鳴る花火
人混みのなかで掴まれた腕
こわばる肩と影が重なる先にみた
追いつ ....
バスを降りて、すこし小高い場所にある停留所から
なだらかな坂をくだっていく
昔、万博が開催されたこともある街
坂をくだりきった道の角には
くたびれたカボチャやスイカを段ボールに積みあげ ....