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私の渦よ
手のひらをゆく
雲にふれるな
落葉を裂くな
くるくるまわれ
息をきらして
ぎやまんの光
おまえにやるから
私の渦よ
死にそこねた蝶よ
....
人さし指と中指で
腕についた血を軽くはさむ
もう流れないそのかたち
なかば閉じかけた三本の指のあいだから
口と目のない白い髪の女のにおい
....
卵を産んでいる親蜘蛛を
卵と一緒に握りつぶして
やさしい少女の顔をした少年
そのままの手で夏の樹を抱く
春の花ほつれゆくまま雨模様
現し世のなべて二重の涙かな
雨の舌双つの蝶を行き来する
手のなかに生まれ滅びる己かな
留めおく術も失くし ....
分かれた空がさらに分かれ
水のなかの葉をすぎてゆく
音は動き 季節は動く
ほどけては鳴る遠い金
映るすべてに傾く空を
青はころがり
かがやいてゆく
陽は落ち ....