僕は人と人の間にいます
AさんとBさんの間にいます
Aさんからの伝言がBさんに伝わらず
BさんがAさんにしてもらいたいことを
Aさんにさせることができず
僕は壊れていくのです
こんなことで ....
約束されたことは、なかった
ただ一度も、なかった
噛み合わない歯車が磨耗を呼び
嬉々として
それを食い潰した
約束されたことは、なかった
約束されたことは、なかった
なだ ....
おはよう、
と
立ち止まれるのは
げたばこだけ
あなたは、寒さには気づかない
わたしの
手が赤いのはしあわせだからです
髪が、さっきからおりてきて
邪魔をします
....
今すぐお前はひざまずいて許しを乞え
そう言いたげな世の中である
巨大でどう猛な牛が血を飛び散らせ
倒れる姿が見たい
そいつは知力と情報を角に蓄えて
ひたすら暴れ駆け回る
俺を目ざとく見 ....
からだじゅうのざわざわ、いっこいっこ
追っかけて 今日は、晴れているの、
太陽がおっこちていてよかった、ぽっかりと
あおぞら。追っかけても、追っかけてもどれにも追いつけない、
でいる わたしは ....
冷たい壁の手触りを確かめながら
第十三使徒
死都
ネクロポリス
暗い地下道をたどって行くと
薄汚れた鏡に
見知らぬ男の姿が映し出された
肩をすくめた黒マントの中に
密かに呼び出される空 ....
風の強い午後だった
僕は屋上の金網にもたれて
空っぽの青い世界を眺めていた
広大な草原を思わせる
羊雲
羊雲
心の翼をそっと広げ
空の青みに溶け込んでいった光の子供ら
遠い異国の丘 ....
うっそうとした森の中では
樹齢何百年という倒木が横たわっている
かすかなひかりの帯を浴びて
そこにはみどりの新芽が生えている
根をしっかりと下ろして
樹 ....
海岸草原のみどり
はまなすの赤
萌たつ草の焔の中に
風露草のうすもも色
原生花園をぬけると
落ちていくように
空がりょううでを広げて
濃紺の海がひろがっている
道東の海は冷たく ....
他者を語る私は どこか残酷だ
私は他者にはなれないし
私は私でいるしかない
人はどこまで
他者に近付けるのだろう
私には明確に皮膚がある
寄せつけないため
私のやわらかい部分
....
森の中で月を見て
青さ静かに、目に染みていく
あるかないかのカーブを
そろり、ふわり、降りていく
静かに、選ぶ言葉に僕の
音はどこかで回り続けているか
泳いでいるのは、あなた
そ ....
皮膚のすぐ下は清冽
流れゆく血が私を
結びつけているのだ
家と人と肉と そして
全ての生きているものたちと
血によって私は
辿り直されることを許す
血によって私は
絶えず内 ....
やらしくない裸みたいな
蝶々が翅を広げて
紫色の光を頭の中で回させる
つややかな官能
ジェシカ、
君がセックスをせっくすと発音するから
僕はいつまでも取り残されている
いつま ....
そっと、暮れそうで
暮れない
一日はどうにも循環していて
頼りない電信柱
寄り掛ると揺れる、気がする
静かな平面の畑から
土の匂いがした
単調な起伏を
ごとごとと越えていく
浮き ....
君の町まであと何百年かかる?
僕は宇宙服を着込んで銀色の砂漠を
君の町まであと何百年かかる
目を閉じて考えようとする愚か者
横浜に雨がふっていて
新宿に虹がかかる
そう あのデカい蜃気楼
....
夕日は傾く時間を知っている
その頃になれば
世界がゆっくりと閉じていくことも知っている
背中で、背中ともたれあう
隙間の部屋
四角いスイッチで昼と夜とを切り替えて
のろのろと、立ち上がる
....
質の中に量があり
落下の中に流れがある
無数にまとまる一つ
雨と呼ばれるものの名
儀式のように繰り返され
思い出された最初の音
絶えず動きながら
点在する光を導き
生かしてゆく雨の ....
脂喰坊主は地下鉄の端で
ホームに顔を突き出して遊んでいる
駅員が慌てて止めるが
大丈夫
脂喰坊主は死なない
脂喰坊主はバツの悪い顔で笑う
それから
目を閉じてかっきり一秒
....
夜の真ん中の
縁をなぞりながら
影だけの月の
少しだけ零れる明かりを
晴れることの出来ない日
ここでも
傘だけは、ある
夜に、越えられずに
息の詰まる深みを
ゆっくりと
息を入 ....
君の声が遠くなっていく
チョコレート色の乾いた土を踏んで 怠惰の流れに乗った
宇宙服を着た看護婦も鉄のヨロイを着込んだ犬も居た
僕は旅に出るのだ
強く思い込んでから吐き気がするほど歩く
つま ....
駅前で
ギターで歌い続ける少年の
声を誰も覚えていない
ギターの音色が日付を越える頃
繰り返している月のかたちを
誰も答えられない
すっかり冷えきった自動車の
エンジンをそっとかける
....
色付いた葉が落ちる音、が
聞こえるような
そんな
ある日
静けさは、遠く
連続している朝は
同じように連鎖していた
ありふれている
一杯のコーヒーを
少しだけ苦くした
新聞 ....
一時間に一本だけの電車の中で居眠りをしてみると
回想の中で自分の自分に逢えるので
もう一度と思ってみても
一時間に一本なものだから
すごく困ってしまう
ぼくらは、たまに
どうしよう ....
誰かとこすれあってできてしまった命が
夕方のチャイムと一緒に甕から飛び出た
「あずきとぎ」のささいなミスからこうなった
最初から判っていたことなんて大したことないね、っていう
軽率な発言が玄関 ....
とうといのです
ぽかぽか日和だねえ、と
ぱたんぱたんと洗濯物を干し
ついでによいしょ と
お布団をはこぶ
あのとき
わたしにお布団は大きすぎたのです
お母さんの大きな手で
運ばれて ....
たった一言交わして
すれ違うだけの人にも
私を憶えていてほしい
それは贅沢なことだろうか
食卓や墓地や廃屋にさえ
いつも人の面影があった
私の生まれは人だから
....
混ざり合った夏と秋
蝉の声は草の裏
公園に砂場
さらさらに乾いて
吹き飛ぶ
子供の目線
詰まっている
遊
風化もしない
流れもしない
とどまった
ままで
混ざり合っている今 ....
泣き虫だったあの子は今どうしているだろう
と
眠いだけの午後の中で
当てはまるように浮かんでくる
絡まりそうな思考を
かき分けるように居座る
昔、記憶
ひとつ
指切りで交換した約束 ....
けだものの口からはいつも涎が垂れていて
その臭いは数百メートル先まで届くが
けだものは気づいていない
もちろん
涎が垂れていることに
けだものの体毛は針のように硬く
生えている ....
太陽はどこまでも沈みようがないので
椅子と同化して溶けていきそうな
右足のつま先の前にレールを跨いだカメラ
回る車輪と一緒に垣根を飛び越えていく犬を追う
信号のある十字路はいつで ....
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