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君が渇きません
私は夢見る牧羊犬の尻尾を踏みました
朝から晩まで数えていたら
羊が灰色になってきました
ごましおの柄が可哀想
雲に浮かんだ雨も可哀想
足先から落ちる水滴を目で追い
まとも ....
雨。
浮かれた願いを流してしまって
蝉の声も聞えない
しんとしたスコールが窓を叩く
耳の中の狂騒。
蝸牛がのろのろとフローリングを這い
残る鈍く光る涙の跡
蝉の声が死んだ時
私 ....
湿った空気に撫ぜられて
わたくしの脳内が段々と湿気を喰らい
破裂寸前な頭を持って
ただ立ち尽くすこのひとつの像となっている
ぷかりと浮いた気泡に
呼気に少し湿り気を混ぜ込んで
重い頭を ....
僕はワンカップを片手に
車窓に体寄せていた
電車の外は雨らしく
ぱたぱたと打ち付ける雫が
声なき声の模様を描き僕を飾る
ざわめきの静寂に叫びを埋めて
引きずる体の亀裂を紐で縛って
....
物憂げな予感に満ちて
黄昏時に立ち止まってじっと
夕日を見ている人がいた
空が暗色に沈んでいく
目に丸い陽の跡が残って
月の横に暗色の太陽が浮かんだ
空に色を付けるのなら
赤しかない ....
懐かしい星を誰と指したか
老いた母に訊くと、うんうんと不明瞭に頷いている
分からないまま過ぎていく時間が過去をぼやかしていき
だんだんと星の色が落ちていく
ひとつ星を指した幼さを忘れてか
....
光のすじを避けていく
その海草の揺らぎ
海流の流れ
追い風にならず向かい風
体の力が抜けていく
落ちたしずくは
泡になり
海月のすそを広げ
ゆらゆらと再び宙へ向かう
あの海月 ....