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くちぶえみたいな夜が煮詰まったら
朝やけは痛いくらい赤くなる
はじめて手がみを書いたときに赤くなった
鉛筆を握る指よりももっと
わたしももっと赤くなればよかった
みさかいなくはしたな ....
夜が明けたら
指をむすぼう
悪気のない月明りが
影をつくっている
永遠 という言葉を知っている
それでじゅうぶん
一生 口にすることはなくても
たとえ 夜が明けなくても
....
世界は
そうではないもの で
埋めつくされて
わたしは 青緑を食んでいた
ひとびとがそれぞれに
大切なものを忘れゆくように
猫っぽいものが
あなたっぽい暗がりへすり寄って
休日っぽい一日になった
下腹あたりに
あなたっぽくて
わたしっぽいものを抱えながら
とりあえずいまは
手足がとても熱い
鎧に水をためる
緊張して
わたしは
裸足で
後ろ指を
さされても
いいよ、どうぞ
裸で
こわいよ
でも
わたしは
鎧に水をためる
こんなにみじめなのに
雨もふるのね
蔦は先端から枯れはじめ
あんなにしたのに
あなたは笑うでしょうね
あらゆる肯定をもって
嘘は嘘でなければ意味がないのに
雨はふるのね
蔦 ....
三本足の猫は
とてもはやく走るので
だれにも見られたことがない
知らないふりをしないで
外ばかりみないで
わたしがわたしになるまえに
鉢植えは育ってしまうし
なにかのふりをし ....
ふたりしてつくっていたのは絵ではなくかたちでもなく額縁だった
食べ終えたからだには
波のあと
後ろ手に作曲したふたりは朝を拒んで
花は咲かない 実もならない
良い香りがするわけでもない
冬がくれば死んでしまう草みたいに
あるかなしかの根をから ....
出ていかなければならない
と知っている
部屋は
あなたとあなたでないものでできている
このまま朝は終わらずに
言葉もひとつも終わらずに
開かれなかった小説
届けられなかった手紙
呼ばれ ....
なにはともあれドーナッツ、
食べると穴のなくなるところ、
恋をするみたいに
かなしかったよ
きょうもこんなに曇った空で
なにはともあれ
ドーナッツ
そしてそれが来て、
わたしたちの手は離れる
(あかるいもの
くらいもの
つめたいもの
あついもの
動いているもの、
動いていないもの)
あなたの耳たぶに
甘い水 ....
まったくかまわないよ
世界が
思ったのと違ってても
新聞をめくると
新聞のにおいがする
あなたをめくると
あなたのあじがわかる
あなたがもし
いなかったら
かまうけど
秋のはじまりに
かなしいのかうれしいのか
ほっとしているのかわからずに
虫の音のまじる夜をあるきながら
みていたのは
夢でなくて
たぶんあなたでした
夜空に
虎たちはみごとな円を描いた
あなたが笑ったので
電波は世界のすみずみを叩いた
たくさんの点で構成されるあなた、
膨大なたんぱく質で構成されるあなた
この世のなにかが
まぼろし ....
からっぽをからっぽで埋めからっぽで蓋をしててもあふれるからっぽ
ぎらぎらと夏枯れの咲くカウンター 汗ばむ肌はななめに剥けて
宇宙をてにいれて
ほっとして
ベランダでハンカチはかわいている
背のたかい鳥
ビル
扉
三角形にきりそろえられた意味
ピアノ
ほっとして
ベランダでハンカチはかわいている ....
じたばたと蜜に絡まる水黽よ 飛ぶがはやいかそれとも死ぬか
なめらかな言葉をめくる指の香の 甘い匂いは罪か褒美か
ミニカーみたいな自動車のうごきが気色悪いので、思想をちぎってはなげふるえている。
これは、(こんな)くもり空いちめんのま下に、ビルを行き交うわたしの愚直としてどうぞ。
半とうめいに透き通ってい ....
手紙が送られてくる
まっ白い文面で
わたしはあなたの名を抱く
そうすると世界は痙攣しはじめる
わたしをAと見たて踊らせるのは
おそろしいことにちがいなかったが
おかげで血はとまった
うすばかげろう、
知らない言葉を育てることで
知らない自分を見捨てることができた
(辞書はよ ....
だれがわたしを見捨てたか
指さしや目線の鋭角
とりどりの基準のなかで
きちんと焼却してください
水に落ちていく墨か、
あるいは墨に落とされた水滴か
どちらも、
すぐにそれとはわからな ....
ま夏の背中よろしくこぼれおちる曲線は
ぼくのよろこびにまっすぐに突きささり
それらはやっぱり放物線をえがいている
きみの曲線のおしまいにくちづけをする
そんな目でみたってだめだよ、もう ....
ことばはとめどなく産まれるけれど
ひとつもどこにもとどかない
やわらかい壁がゆれる
わたしがあなたのそばに落ちるとき
きっとひとつも言葉をもたないで
まばたきだけでやりあうような
....
すぐにあしたになってしまう今日 は黒くて、生えている星はぬるい。あしたになったら手に入らない、それとか、夜のたべものとか。背中にはえていたのは、よろよろした壁 ・ だれもいないから、黒を白にしても ....
うしろむきに種を食べていた
あのとき
あなたがわたしを好きだとしっていたら
あんなには幸福じゃなかったろう
鏡とするような接吻ばかりした
そのむこうに
だれかはちゃんといたのに
....
あい色ごしに赤をみて、
まばたきごとに星が降った
あんなにとおい星どうしが
かちかちと鳴りあうのも聞こえたよ
草は草なりに濡れ
砂はひと粒ごとに熟れて
笑いあうのが世界だね
....
あのひとから
ラブレターが届いたので
くちづけをして
しまっておいた
死んでから読もうと思う
あなたが誰なのか
わからなくなってから
コンビニエンスストアで売っている、ひと口でたべられるゼリーは、ふたのビニールを開けるときにぜったいになかの汁がとびでてくるので、指がべとべとになってしまう。だから夫はそれを食べない。
夫のいない ....
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