旋律のない歌
死なない死刑
敵のいない戦争

死のない生
文字のない本
結審しない裁判
沈黙しかない議論
性行為のないポルノ
狂人のいない精神病棟

どれも ぼくに似ている
い ....
理不尽よ

瓦礫のなかに誘われて

ぼくらは死者と対面する

あらゆる執着を

与えて奪い去った

理不尽よ

あなたはぼくらを全否定した


そこを真面目にさ迷った
 ....
振動はごく小刻みなもので
そう、
ぷっちんとお皿に落としたばかりの
おもちゃみたいなプリンに似ている


大きな曲線は、ない
そういえばしばらく見ていない


時々、雨が降る
洗 ....
夜の銀座や北新地で
暫々贈られるバーキンと
呼ばれるエルメスのバッグ

デパートの質流れ販売で
眼の色を変えて
群がる浅ましい形相の女たち

でもその誕生の経緯を
知っている男も女も ....
さざなみは
永遠をよそおう
罪ではない
それは
やさしい嘘

人は
さいごに
この海にたどりつき
さざなみにも
終わりが
くることを知る

かもめよ
愛しいおまえも
いつ ....
ひとりで生きられる
生きられない

それとも、ひとりで生きざるを得ない

わたしってどれなんだろうね




無責任ってわけじゃないけど
ちょうど
満員電車のなかで誰かに寄り ....
やがて再び北風の中
道端のネコヤナギの蕾のように
やさしい春の指先が頬を撫でようと
いつか一つの曲がり角の先
私を包み、光へ導くような
誰もが期待する運命が待っていようと
もうこれ以上一つ ....
買えません愛がどこかで売ってても お金が無いし働けないし

拾っては捨てる神しかいないのか次は死ぬまで愛されてたい

本なんて読んでる場合ちゃうかった正面の席美女座ってる

右腕にマリコ命 ....
言葉がいらないわけじゃなくて
見えている景色が
遠すぎて
だめなんだ

夜は果てしなく長くて
昼間の喧騒には
すぐに追い出されてしまう
気がする

この声で
あなたの心がゆれるな ....
何かが{ルビ蠢=うごめ}くのを背中で感じた
後ろを振り返れば
モゾモゾと動きまわる

何一つ微動だにしない筈の
心の虫は笑いながら蠢く

痒さは手では届かず
イライラで集中できない
 ....
これで終わりだ
哀しみの淵に佇んで
棺桶に片足を入れてみる
そこは冷んやりとしていて
おそらく恋しいとか愛しいとかいう
奥底から生まれるそういった波に襲われて
目覚める前の君の体温 ....
ちょっと悲しいから
悲しみ飲みました
一杯やるかって
そんな気分でした

みんなとかぜんぶとかそういう
言葉をぶちまけて
ぐちゃぐちゃにかきまぜたら
いろんな色になりました

はじ ....
マーマレードの空瓶に挿した
残り物のクレソンに
小さな蕾がついたと
わざわざ見せにくる君

これから何年経っても
君の世界に吹く風は
遊歩道のささやかな花を香らせ
名も知らぬ草を撫 ....
あきらめてみる

たとえばわたしでいることをあきらめてみる

すると亡くなった母のこととか
ひとりぼっちの寂しさとか

なんだかふぅっと身軽になれて

お線香のくゆりは相変わらず苦手 ....
ついに漂着した朝は
まっしろくて水浸しでカーテンは透ける
明るいな
きみのよわい視力
それに傷つけられたわたしの背を
すこしぴんとさせるようだよ

ねむり
に、かたちをあたえようとする ....
この坂道は君とともに上った坂道

ふたりして登坂の辛さにあえぎ
君の差し出した手のひらの熱さに驚きながらも
未来への扉が垣間見えたような気がして

したたる汗の交わる戸惑いと
きつく握り ....
白い街に灰が積り
君の姿を見失ってしまった

壊れた棚の中にある
透明な器に君が映り

追いかけても追いかけても
君には追いつけない


息を切らせて顔をあげると

鏡に映った ....
「どこかにいきたい」と
ふいにあなたはいった

ぼくは
「どこにいきたいの」と
あたりまえのようにきいた

「やさしさのあるところ」と
さびしそうにあなたはいった

ぼくは
「こ ....
わからないものには触れないよ
ひかれる香りがする花に
隠して毒がひそんでる

指先がまた罪犯す
迷っている割に潔い屈伸で

君がつけた傷がまた痛む
消えてほしくない理由に無視をする
 ....
手に取った朝が するりと零れ落ち
それでも私は翌日に居た

あっけなく終わりは来るが
待っているとやって来ないものなのだと
終わる前の彼女が言った
その言葉を
水面に浮かべて ....
ふきのとうが売られている
そこにある春は
私の居場所からは遠い春

外は寒くて
天気予報のゆきだるまに
驚かなくなって二月

桜の蕾が目につくものの
すくめた首のせいでよく見えない
 ....
吹きすさぶ風に
みがかれて
凍てつく水に
すすがれて
透き通ってしまった
哀しみは真冬の
背骨に宿った

遠ざかる空に
みはなされて
優しすぎる光は
とどかなくて
行先すら ....
風が私の
すべてをかいくぐって
すべてをさらいそう

信じないって言ったから
試そうとしていたのかな
体温は
だれかに言った 寒いね
の一言で一℃あがる

ああ 寒いね
の返事で ....
見上げられたり
ボールをぶつけられたり
喚き散らされたり
夕陽をむりやり飲み込んだり

よりかかられたり
素敵な落書きをされたり
蹴っ飛ばされたり
三日月に添い寝してみたり

 ....
 冬のあま雲に
 のぼってゆくように
 クルマで雲に
 わけ入っていった

 国道の
 あま雲のなかは
 濃いキリが視界をさえぎる世界で
 アスファルトに刻まれたセンターラ ....
さかな色の、光が
夜の道を跳ねる 

記憶にふる 蒼い雨の想い
街灯の光りは、やすらぎの
{ルビ七色=にじ}を生むこともない孤独に満ち
つめたい 明かりを揺らす


力尽き 腐植し始 ....
きみはひどく咳き込み
すぐに踞った
今日は風がつよいね
手をつないで
髪を
なでた





すきだよ


あまく
湿った声は遠く
いつも
おびえているみたいだった
 ....
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