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ある夜 街はずれの広場で
夜空を天幕がわりに
サーカスが催された
楽隊のない 静かなサーカスだ
曲芸師たちはみな骸骨
水晶のように無色透明なのや
黒曜石のように黒くつややかなのや
銀色の ....
塔を隠した樹々たちがくりかえす
やわらかな墜落

螺鈿の微笑を浮かべる遊星たちが
結晶状に形成する空間に
浮かべられた白い柱廊に
並べられたフラスコ

時折それらのいくつかの中で
新 ....
世界の終わりを思わせるほど明るい日
地の果てのようながらんとした広野に
世を捨てたようにひとつ立つ古い塔のそばで
君は僕を待っていた

僕らは手をつないでだまって塔をのぼった
ひょっとして ....
白くつめたい指が摘んだ菫の花束
破綻をつづけるイノセンス
誰にもわからない時を刻む時計
虹色に震えながら遊離してゆく旋律
救いの無いシナリオ
かすかに聴こえる古いオルゴール
のようなノスタ ....
君という雨に打たれて
私のあらゆる界面で
透明な細胞たちが
つぎつぎと覚醒してゆく

 夏の朝
 影に縁取られた街路
 やわらかな緑の丘
 乾いたプラットフォーム
 きらめきに溢れた ....
夜明けの窓は孔雀色
今年もまたうたうように
アガパンサスが咲いている

七月はわたしの中で
いちばん甘く実る果実
君はいつかそれを 別の名前で
呼んだかもしれない

少しずつ風がうご ....
夏は容易く永遠を擬態するので

僕らの意識の最も敏感な部位は

いつでも眩暈に侵されたままだ
空は虹色に溶け
得体の知れない甘さが
いちめんに薫り立つ夏のゆうぐれだ
長い夏のゆうぐれだ
君の記憶が
水のように透明に
けれど水よりも濃い密度で滴ってきて
それは容易く
私の現在を侵 ....
必死に壊れつづけている

飛び散る銀色のビス
耳には音楽のようにつづく歯車の諧音
プリミティヴな装置に
青い微笑み
必死に壊れつづけている

遠くから重く暗い地響きのようなうなり
は ....
君の既視感を舞っているのは
紙製の蝶だよ
いちめんのなのはな と君は呟くけれど
此処はうち棄てられて久しい館の中庭
君が坐っているのは朽ちかけたベンチだよ
とうの昔に涸れた噴水の傍の

 ....
そうです
世界から隠れて
潜って居られる場所が要るのです

まじりけない初期衝動とだけ
ひたすらに戯れて居られる
そんなパラダイスを
とめどなく夢見てしまいます

子どもじみているの ....
異なる方向をもつ
いくつかの時空の瞳が
時折ふと{ルビ輻輳=ふくそう}する

その焦点に結ばれる
あのひとの像

たまゆら
その眼差しも
仕草も
声も遠く
けれどかつて触れたこ ....
此処は昔風でそれでいて未来的な
実験城砦
此処に居て僕のすることは
純粋であり続けること
その純粋を自ら頑なに
裁き続けること

此処には僕の他誰も居ない
そして僕はほとんどの時を
 ....
めぐっているのは
時ではない
 
願うこと求めること欲すること

知っていても
祈ることはいまだ知らないのだから
 
憧れるほどに
まなざしは遠ざかる
破滅的な情緒で
恋をする ....
夜と交わす記憶は
あらぬ方向へめくれてゆく
形の定まらない部屋に
ひとつまたひとつと
見えない炎がともってゆく

この身体のそばを通るとき
時の流れは
とまどったようにとろりと遅くなる ....
蒼白の薄明
永遠に処女の領域

素数のみで刻まれた暗号
純粋遊離線

冷たい蜃気楼
置き去られた天象儀

倦んだ庭園
途絶えがちなピアノの音

未分化な恐怖を秘めた深淵 ....
プラットフォームで 日陰のベンチに坐り
僕は詩を書いていた
いいや君への手紙だったのかもしれない

白い午後
静かな校庭のこと
いたいけな青空のこと

いいやそんなことじゃない
間奏 ....
そしてまた世界は
からっぽに明るくなる
このいたずらな明るさの中では
何かを見分けることなど出来やしない

事象たちが書き割りのように
意識に貼り付く
歩きたい道を見いだすことも困難なの ....
私の中に
午前を飼っている
白い舟がいくつか
遠く漂う午前だ
華奢な草の葉がためらいがちに揺れ
吹く風のなかに
覚束なげな青さが
消えない午前だ

もう長いこと飼っている
だからも ....
夢のように美しく 哀しい

きらめく空中ブランコ
この手に掴めたもの
掴めなかったもの

きらめく空中ブランコ
この春と夏とを彩った
ときめきを見送る

きらめく 宙を舞う肢体
 ....
夏雲がゆっくりと渡ってゆきます
手をかざしても よくは見えないけれど
僕らの記憶は 眩いあのあたりで
いまも青空にまみれて 遊んでいるんです
あたりじゅうすべてが蜃気楼と化してしまいそうな
夏の午後
裾の長い木綿の部屋着に包まれ
籐の長椅子で微睡む一個の
流線型の生命体
窓からのゆるい風が
肌にときおり触れて過ぎる
ほの甘くあ ....
かなしい夏 ?


夏の首すじが
眩しい

何もすることのない午後

空気さえ発光している

しなやかな夏のゆびさきが
飽きもせずあやとりしてる

夏はあの木立のてっぺんあた ....
悪い子にはなれなかった
投げやりにほどいた長い髪を風になびかせ
夏雲が縺れあう丘の空の下
夢を{ルビ歪=ひず}ませて
立ち尽くしていただけ

「君」がきっと街からここまでさがしに来てくれる ....
夏を告げる鐘が鳴ると
少年たちの中で 天国が走り出す
六月の
曖昧な空の下
白くたたずむ部屋
横たわる私の身体から
刻一刻と
鼓動がこぼれ落ちる

けだるい指で
クロニクルのページを繰る
季節は私には
いつも晩くやってくる

忘却 ....
把みきれない現実に
心が過剰で収拾がつけられない
はみ出してゆく言葉たちが
僕を取り囲む時空に傷をつけてゆく
瞳はいつも怯えたように見開かれてしまう
何故対峙してしまうのだろう
何故融合で ....
そのはじまりからすでに
鋭く亡びに縁取られているのが夏で
青空と陽射しがどれほどあかるくても
そのあかるささえ不穏なのが夏で

蝉が鳴き騒いでも
祭の喧噪が渦巻いても
濃密な静寂が深々と ....
窓辺を漂っていたスウィートピーたちは
薄れて消えてしまったよ
白いのもピンクのも薄紫のも
いつか行こうなんて云っていた
銀の門のある空中果樹園も
いつのまにかどこへやら消え失せてしまったよ
 ....
僕らは 一列に並んで
少しずつ 進んでゆく
かぎりなく長く思える柱廊を
誰も 一言も発さないまま

僕らは 白い衣を着て
白い布で覆われた銀の皿を両手に捧げ
少しずつ 進んでゆく

 ....
有邑空玖さんの塔野夏子さんおすすめリスト(44)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
静かなサーカス- 塔野夏子自由詩5*07-8-31
実験室65−F- 塔野夏子自由詩10*07-5-1
明るい日- 塔野夏子自由詩9*07-4-25
処方箋- 塔野夏子自由詩12*07-3-11
約_束- 塔野夏子自由詩30*07-2-25
果実の名前- 塔野夏子自由詩18*06-7-23
- 塔野夏子自由詩14*06-7-15
夏の場所- 塔野夏子自由詩21*06-6-13
incomplete_poet- 塔野夏子自由詩12*06-4-27
架空の春- 塔野夏子自由詩15*06-2-7
Hide-and-Seek- 塔野夏子自由詩11*06-1-13
距離・庭園- 塔野夏子自由詩9*06-1-3
実験城砦- 塔野夏子自由詩10*05-12-11
少年観覧車- 塔野夏子自由詩9*05-11-11
夜_と- 塔野夏子自由詩12*05-10-31
elements- 塔野夏子自由詩14*05-10-11
間奏曲- 塔野夏子自由詩12*05-9-19
九月の黙示- 塔野夏子自由詩17*05-9-13
午前を飼う- 塔野夏子自由詩26*05-9-3
サーカス- 塔野夏子自由詩11*05-8-17
夏の天辺- 塔野夏子自由詩12*05-8-9
午_睡- 塔野夏子自由詩18*05-8-5
かなしい夏- 塔野夏子自由詩20*05-7-31
丘の空- 塔野夏子自由詩8*05-7-17
条件反射- 塔野夏子自由詩9*05-6-29
午後の舟- 塔野夏子自由詩12*05-6-7
scratches- 塔野夏子自由詩8*05-5-31
夏について- 塔野夏子自由詩27*05-5-23
灰の月- 塔野夏子自由詩11*05-5-17
行_列- 塔野夏子自由詩6*05-5-15

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