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涙が邪魔だから
瞳はもう必要ない
見ることは諦めて
耳をすます
そんな日々が転がり始め
ホワイトシチューの中に溶けていく
しばらくこれだけを食べて過ごそう
鍋をぼんやりと見つめながらそう ....
うつくしい響き
何かが溶けるような
うつくしい響き
風にとばされながら
うたい続けている
うつくしい響き
鳴るよ
君は鳴る
その奥に潜むグロテスクな塊を
うつくしい響 ....
馬鹿が微笑む
それは見事に
芸術品の様に
きらり美しく
馬鹿が微笑む
そんな馬鹿を羨む
微笑むのは苦手だ
いつだって苦手だ
何も感じられない
と言ってはみるが
表に出な ....
アパートの鍵を失くしてしまって以来、人と会うたびに誰かが部屋を施錠する音が聞こえるようになった。その音はどんな音楽よりも耳に残るものだったが、少し存在感がありすぎるようにも思えた。角部屋の窓は、少し ....
無意味の中で
意味を求めて言葉を書き連ねる男
技巧は太陽の熱にやられてくたばった
ユーモアは強い風に軽々と吹き飛ばされた
そして想いは雨に溶けながら尚も成長を続けている
ペンが走る前 ....
虹の向こうがわのことを考えていた
蜂蜜を舐めながら歩く彼のことを
いぶかしげに眺めている
そんな自分も
周りからみれば奇異な存在なのだろう
滑り台から流れ落ちていく雨
水たまりを作らず ....
言葉
声に出されることはなく
音として空気を震わせることもない
そんな言葉が積み重なって行く
届けたい誰かが
息をしているのはどこか
いくら探しても見当もつかない
空の下でくるくると踊る ....
音楽を聴いている
夜
街灯の下
あたりに歩く人の姿は無い
無表情な乗用車の
遠慮のないヘッドライトの光
と時折すれ違いながら ふらふらと進む
耳をふさいだまま歩くのは
....
手に取った朝が するりと零れ落ち
それでも私は翌日に居た
あっけなく終わりは来るが
待っているとやって来ないものなのだと
終わる前の彼女が言った
その言葉を
水面に浮かべて ....
空が削られる
パラパラと降ってくる削りかすは
鉛筆のそれに似ている
積もることもなく
街の音を少しだけ消していく
人々は傘をさす
溶けていく空の断片を吸って
傘は成長を続ける ....
+
苦笑いの先の
たちの悪い後味が
列車に乗って 体の中を駆け巡る
窓の向こうで手を振る子供たち
飴玉を舌で転がしながら
噛み砕く未来について考えている
さらにその先では
色とりど ....
きみのし
考えたこともなかったし
その日の空はうそみたいな顔をしていたから
言葉は何も浮かんでこなかった
この物語では
信じられないことが
信じられないほど起こるし
それ ....
夕暮れが泣いているのだろう
高台から見渡す街の灯が
救いが無いほど光って見える
大勢のひとりが積み重なって作られた明かりだ
しばらく茫然とそれを眺めた後で
僕はただ静かに下りていく
....