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雪雲が覗いている
疲れた卒寿の独り暮しに
隙あらば発破を仕掛けようと
庭木も垣根も身もだえしている
そのうえ 漆色の夕陽と
きつい北風に 門扉さ ....
朝刊に折りこまれた
それは裏面が真っ白な
パチンコ屋のチラシ広告
(メモ用紙にと気をきかせたのか)
そして
無聊に明け暮れてい ....
入院中の相部屋で
天井の淡い模様をながめながら
暇を持て余していたおいらにとって
それは それは 照れ臭かった
担当の女性看護師から
米寿 おめでとうございます と言われ
....
改装をくりかえして
築四〇年余は建付けの歪み
隙間風が折角の暖房部屋に吹き込んで
基礎代謝低下のおいぼれは震えるばかり
まるで片田舎に建っている ....
独り暮らしの侘しさを
はぐらかそうと
つむじまがりの北風のなか
杖と携帯をよすがとして
....
若さがどれほど尊いか
その自覚がまるでなくて
ピエロとマジシャンになりすまし
ときいろの四次元を軽視して おらは
三度のおまんまを食べていた
そして それが いまや
老いに責められやっ ....
キッチンなどとハイカラにいわず
おいらはお勝手というほうが
なんとなくピンとくるなぁ
明治のおふくろさんの匂いが ただよってきて
リビングなどと気取っていわず
....
夏 木陰からの風がほしいのに
木漏れ日だけで充分なのに
冬 すきま風でも厭なのに
日向ぼっこだけで満足なのに
どうして あまのじゃくなんだろう
コスモスの花芯 ....
一度ならず 三度までも
easy going にあまえたまま
いのちびろいしてきた おいら
老残になって やっと気づく
「時」は「風」にながれ
「空」は「光」にひろがっている
....
エゴとエロスにまみれて
塑像の祝祭を冒涜 忘却し
偶像の葬送を傍観 無視していた
青い春と赤い夏
白い秋が過ぎ 黒い冬となった いま
猫背の髄 ....
うつつをぬかすなかで
うつつならぬ「ねいろ」におどろく
おゝ くろめにしずみこむ
にびいろの「時」ょ
よくきいてごらん
「風」が ....
骨のしびれと肉の痛みに
霊魂が戸惑う堤防の草むらで
空き瓶と空き缶が寄り添い
密談をしている
亀裂の入ったトルソと
染みの入った掛け軸の ....
丘のひだに喰い込んだ
かぼそいアベニューをほどこうと
腰骨と膝小僧に云い含めたとき
野末はすでに 綻びていた
黒い「しみ」さえ見せて
そして
かたわらの雑木林では
薄気味悪く 土鳩が唸 ....
「時」が顔に仮面をつけて
「空」を皮肉っている
やがて おまえさんにも
そのとばっちりが降りかかるだろう
ボレアスがにびいろのなみだとなって
あゝ 森閑の門口から
パラダイ ....
さやさやと
緑の褪せたわくらばが
揺れて慰め合う秋
羊田には渡り鳥が集いはじめる
プロムナードで自分に呼びかける
さぁ ねこぜをそらさ ....
庭のむくげが猛暑で負けた
腐った水密桃のようになって
庭の隅がわくらばで参った
燃えるごみの置き場所のようになって
「風」がうなだれている
「光」は怒鳴り散らしている
「時」も ....