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街路にいるぼくが
語りかけるとき
胸の塔の
小さな窓があき
風がはいって
搭の中に眠っていた
もうひとりのぼくが
街路をのぞく
去っていくときに
長い髪をゆすって
一度だけ
....
入学したての小学校の教室の机に
ひらがなで名札がついていた
その席に座ったら
ひとりぼっち
と風がささやいた
家に帰ると
オコちゃん
おやつがあるよ
と母に呼ばれる
近所の子ども ....
ぼくが朝に来るたびに
遠景にある像がわずかに
動く気配
それをモアイ像となづけて
毎朝
位置を確認する
いつかぼくと一体になるために
近づいてくるのだ
事故のときには
重い像が空 ....
体育の授業でできなかった
隣に座る女の子が休み時間に
ぼくを誘ってくれた
ふたりで校庭をはしって
鉄棒につかまり
練習を始めた
雨の降らない日は
休み時間のたびに
ふたりで鉄棒をす ....
国道四号に抜ける
夕暮れの千住の小道に
スタンドバーの看板の
男の顔の上半分が赤くなる
大人になればこの店で
夜を過ごせるのか
まだ小学生のぼくは
家に帰るしかない
日の光が消 ....
しまっておいた物が見つからない
きっとかくれんぼをしている
不意に見つかるときは
隠れているのに飽きて
そろそろ見つけてよ
と言いたげに現われる
普段からよく使う
机の引き出しか ....
夢で大人にお辞儀する子ども
互いに正座している
どこの子だろうか
黙ったままうつむいている
何のために向きあっているかもわからない
目覚めが近づいて
シルエットがゆれだす
夢の白い網 ....
家をでたまま
中学校への道をそれて
雑木林にわけいる
ハンターが通るだけの狭い道を進む
二股に分かれて獣道に入る
林の奥の日光の柱が立つひとところ
草むらで鞄を枕に
制服のまま寝転ぶ ....
妻が孫の顔を見に泊まりに行った晩
ぼくは真夜中に目覚めた
喉が渇いているわけではない
トイレに行きたいわけでもない
なんで目覚めたのだろう
ふと隣を見た
そうなのか
きみがいないから ....
青紫の花びらに
涙がひとつ
めしべの奥の
白い洞窟に
隠されているのは
新しいいのちが
育まれる仕組み
蜂がはいっていく
蟻が群をなしてはいっていく
ぼくもはいっていく
男は虫 ....
ぼくの声を
受けとめて
返してくる
きみの息づかいが
ぼくの耳のカタツムリに届き
回転滑り台をおりて
胸にまでくると
安心する
迷うことがあると
きみに電話で話す
話すだけで何 ....
闘いの布石をする
陣地を作るために
白石を置いても
ほころびはでる
黒い石を
囲んだつもりが
逆に囲まれて
陣地が取られそうになる
碁盤の闘いのひとところ
先を読むために重ね ....
薄桃色の貝殻
蓋を開けるまで
固く身を閉じている
指の先がはいらない
貝の根元の
薄い毛を撫でる
息をふきかける
声をかける
唇で吸う
貝から液がもれる
蓋が少し開く
指であける ....
ぼくは沸騰するスープである
ジャガイモが崩れていく
ぼくは真っ赤に茹で上がる毛蟹である
苦しさに前脚を伸ばして泡を吹く
底から熱せられていて
二重の蓋がかぶさる
重くてもちあがらないで ....
地上で使った資料の多くを海の藻屑にする
書斎は浅い海の底
侵食された岩の本棚に
小さな貝が貼りつく
整理された書斎には
イソギンチャクや
蛸や珊瑚が棲みつく
海面 ....
火が
材木から
顔をだしたり
ひっこんだりする
勢いがつくと
赤い鬼のように
筋肉質の胸が
出てくる
鬼に熱い息をふきかけられて
からだの前半分は
服の下まで暖かくなる
....
雲を帽子に四人の巨人が
千住の街に立っている
頚に銀色のネクタイをつけて
黒い服を着ている
ぼくが手をふると
こちらをみおろす
狭い路地に入っても
のぞいてくれる
走る電車の窓 ....
叔父がつくってくれた
平べったい玉子焼きをたべてから
小学校にでかける前に
ぼくは儀式をはじめる
父と母がまだ寝ている四畳半の寝室をすこしあけて
二人の寝姿を視野におさめる
それから目 ....
締めきった部屋の中にいて
小さな風を感じる
どこからきたのか
あたりをみまわす
ベッドで寝ているぼくの胸を
よぎる小さな影
どこからきたのか
窓に仕切られた空を見る
独りのとき ....
女
野原を焼く火が胸にチリチリと燃え広がる
期末テスト
中学校を燃やしたくなる
表彰
自分がもらうときはそんなものかとおもう
面接
なんでこんなおもいをしなければならないのか ....
インドのビンバシャラ王は王妃イダイケとの間に子がほしくてうらなってもらった。すると仙人が死んだあと子として生まれ変わるといわれる。仙人にきくと、あと三年で死ぬからそれまで待ってくれといわれる。王は三年 ....
胎児
鰓で呼吸していました
母が引越しのための交渉している
子宮の中が狭苦しくなったので
ぼくはからだを硬くしました
誕生
はじめて空気が
喉をとおったとき
胸が裂ける痛み ....
コトバになる前の液体が
血管のように
からだじゅうをめぐって
指のさきからしみでる
溶けているのは
うれしい
かなしい
すき
きらい
うつくしい
きたない
そして
点滅する ....
「見つけると幸せになれるのよ」
近所の女の子がいう
四つに分かれた青緑の草を数本持っている
これでわたしは大丈夫だわと
少女の眼は語る
ひとつわけてほしいが
胸の前でしっかりと葉を持つ少女 ....
酔いすぎたあとの朝の目覚めは
透明な悲しさ
霧の湖の水面に
さざなみがたち
底がゆれる
どこまでも沈めるようでいて
波間にただようしかない
ぼくの影はぼくの形から
女の長い髪が広が ....
乾 加津也さんの殿岡秀秋さんおすすめリスト
(25)
タイトル
投稿者
カテゴリ
Point
日付
胸にチクリ
-
殿岡秀秋
自由詩
10+
14-5-1
二つの名前
-
殿岡秀秋
自由詩
12
14-1-1
死のモアイ像
-
殿岡秀秋
自由詩
10
13-12-1
逆上がり
-
殿岡秀秋
自由詩
7
13-4-15
夕暮れの影
-
殿岡秀秋
自由詩
6
13-2-15
無くしたものとの対話
-
殿岡秀秋
自由詩
8
13-2-1
夢の続き
-
殿岡秀秋
自由詩
7
12-10-15
秘密の場所
-
殿岡秀秋
自由詩
4
12-10-1
妻に
-
殿岡秀秋
自由詩
8
12-9-15
朝顔の顔
-
殿岡秀秋
自由詩
9
12-9-2
メールより電話がいい
-
殿岡秀秋
自由詩
4
12-8-1
白と黒との闘い
-
殿岡秀秋
自由詩
5
12-7-1
貝にささやく
-
殿岡秀秋
自由詩
6
12-4-1
二重蓋の圧力鍋
-
殿岡秀秋
自由詩
9
12-3-15
海底の書斎
-
殿岡秀秋
自由詩
11
12-2-15
焚き火
-
殿岡秀秋
自由詩
2
11-10-2
お化け煙突
-
殿岡秀秋
自由詩
9
11-9-15
視界を選ぶ
-
殿岡秀秋
自由詩
5
11-3-15
どこからか
-
殿岡秀秋
自由詩
6
11-3-1
待つ
-
殿岡秀秋
自由詩
3
11-2-15
アジャセのしるし
-
殿岡秀秋
自由詩
3
11-2-1
呼吸期
-
殿岡秀秋
自由詩
8
11-1-18
記憶の小道
-
殿岡秀秋
自由詩
7
10-12-20
花言葉
-
殿岡秀秋
自由詩
5
10-11-14
霧の顔
-
殿岡秀秋
自由詩
5
10-11-1
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