ことばに
よじのぼって
泣いたり
笑ったり
しているが
水分を
ひとつも
よこさなかった
好きだ
と言うと
自分の
腕が
抵抗する
ふさわしくない
と
ケーキを
取り落 ....
遊園地に「回転しない木馬」があった
妻と娘が乗り
僕が写真を撮ることになった
バーにおつかまりください
というアナウンスの後にブザーが鳴り
回転しない木馬が
回転し始めなかっ ....
ぽっかりと口をあけて
君はねむっている
愛さずにいられない
その唇が
ときに嘲ることもあるというのに
睫毛をしんとさせて
ねむっている
....
ゆうちゃんは無口な転校生だった
四年生の春に
ぼくのクラスにやってきた
ゆうちゃんと、ぼくは
なぜか気があって放課後はいつも一緒にあそんだ
がっこうは友だちできへんからきらいや。
....
最近自分の影を投げ捨てる人が多いと聞きます
一度投げたら最後、もう死ぬまで影はなくなるそうです
自分の体全体がぺりぺりかさぶたをとるような感覚であり
それはもう快感を越えたものである ....
空車、と書かれた
駐車場の表示を見て
娘が空を見上げる
もちろん空に
車などあるわけがない
雲しかないね
つまらなそうに言う
娘よ、きみには
遠い昔のことかもし ....
まどろみの風下で
アミメキリンの夢を見た
縁側の木漏れ日の
網目をかいくぐって
鯨偶蹄目キリン科の
枝先に腰掛けていた
うたたねの岸辺で
アミメキリンの夢を見た
首を長 ....
おまえだれだよ。
おれだよ。
おまえか。
おれだ。
みえないよ。
みえてるよ。
みえません。
みえてます。
おまえか。
おれだ。
かみきった。
きってない。
やせた。
ふとっ ....
朝から酒を飲んでいる
涙をこぼして飲んでいる
都会の空地の駐車場
道行く人は見ない振り
電信柱のゴミの横
フェンスの縁に片手掛け
地べたに座り飲んでいる
通勤客は足早に
見て見ぬふりの ....
わたしの右脳と左脳が
けんかをしています
頭が悪いのはきっとそのせいです
わたしの右足と左足が
けんかをしています
足がのろいのはきっとそのせいです
わたしの右手と左目が
....
安全な野菜だと伝えられても
安心な社会にとうたわれても
私のなにも変われずに
そのことがつらくなる
君がみた光景が
君の知る昨日と
違うと泣いた
それでも互いに
よしとして ....
無人のブランコが揺れる
温かくても冷たくても
風はいつもものを動かそうとする
ジャングルジムの天辺に登れた人が
みんなから尊敬されていた時もあった
そんなに昔のことではないけれど ....
ふっとみえたのは
あしでした
あしいがいになにもない
わたしでした
うさぎにうまれ
うさぎとしていきていた
わたしでした
たしかなことはしりません
ことばより
....
焼き肉を食べました
チキンを横目でみて
ぺろりと食べました
家々のネオンがとってもきれいです
星がない空です
願いごとのせいで重そうです
私もひとつだけ
平和でありますように
....
抽象画家が描いた
うつくしくはりめぐらされた運河
本流が支流になって
クモの巣状の千の川になる
―― そこに
ジェルマン
という街がある
静電気をおびた ....
通りの中で
立ち竦んだ
何もわからないし
何も言えない
僕が僕を否定し
そんな僕を僕が否定する
そして、肯定する
AとZが
その他全てを脅かす
その方が楽だから。
極端な夢は
....
小さい方から数えて100番目の不思議の前で
両足を揃えて立ち止まる
ずいぶん背が伸びたなあと、自分の後ろにできた影を見て思う
1番目の不思議は、どうしてごはんを食べなきゃいけないんだろうって ....
「有害な空気を生み出す煙突のようだね」
そう呟いたのは、他でもない私の心でした
体内をぐるりと回り行き場を失くした有害物質は、ため息と共に吐き出される
透き通った冬の空気
吐いた息は煙 ....
目覚めると真っ先に君の二の腕を求めた内側から蝶の刺青を浮かび上がらせるそれを僕はどうして失ってしまったのかほとんど無自覚のまま
本当に美しい言葉は永遠でも真実でも物語でもなくあなたの唇が開いたと ....
支えとしての音を失って
私は迷うと思ったが
踏み出す足の先は
同じなんだとわかった
空間を歩く
私は心細いけど
それは なにかがないせいでなく
だれかが いないせいでもない
ど ....
あんなにも忙しくぼくの脚はうごいていたのに
それいじょうに
踏みしめていたものの方が素早いなんて
なので、いつまで此処にいられるか
ぼくはじっさい
心もとない気分です
....
忘れられず脳の底に溜る
の声
の指
の頬
の髪
の癖
の仕草
の香り
の夢
無意識に象った
が消えずに
何時までも 何時までも
忘れられず ....
だれも間違わずにたどりつけない
夜の道は過去への分岐点
雲に記したキゴウ頼りに
進みたかったのに闇でみえない
幹にくくったはずの覚悟たちは
夕焼けがみな焼いてしまった
地面に埋めたのは ....
トゥクトゥクの傍らで赤い夕日を待って
犬は
なにもしていない真昼
なにをしているのだろう、そこで
みずからの首に首輪をつけ
ひもをつないで
犬って
なにも ....
小さな自慢をちりばめながら
豪華な詩集は踊りだします
華麗な絵はどこか冷気をだしています
人の心は
とはじまり
ありたい
と結ばれて
脳はぐるりと
一回転する
頭の中にお ....
夜 お手洗いに起きて
階段をトントンと
降りた
リビングでひそひそと
話す
父と母の声が聞こえた
あの子は冷たい子だね
母は言った
一瞬 なんのことか
わからなかっ ....
目には見えないが
確かに巨人の朗読が聞こえる
すぐ近くにいるときもあるし
間遠いところから
細々と聞こえるときもある
詩や あるいは詩が
巨人は聖書のゴリアテとは
一 ....
*
ビブラートに揺らぐ空の裂け目を
幻視の鳥が飛ぶ
*
明滅をくりかえすビル群が剥がれ落ちる
((NYという記号を描くその一点として わたしが燃やされる))
....
オタマジャクシが
ぼくのまぶたの裏側に棲みついてしまった
けれど、だれからもみえない
ぼくにも
影の輪郭しかみえないが
たしかに棲みついて動きまわっている
....
平日は
ぎっしりと湿った砂が詰まった頭に
素敵な大人のお面をつけて
行列の最後尾で傾きながら
特別快速の通過を待っている
休日は
いっこうに衰えない逃げ足に
穏やかな家庭人のジャ ....
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