お代り、と言って
空の茶碗を掌に持ち
伸ばした腕がどこまでも伸びていく
伸びきったところで
祖母が茶碗を受け取って
傍にある炊飯器のご飯を茶碗に盛る
おばあちゃんのお代 ....
19時20分
マンション前の市バスの停留所に
降りる
空を見上げた
青空!
ポツ ポツと瞬く
外灯の上に
灰色でも黒に近い青でもない
青空が広がっていた
夜の青空だ
....
列車も停まらないような
ホームの一番端でひとり
ご飯を食べている
ちゃぶ台は誰かが置いていってくれた
多分、親切な人なのだと思う
納豆や根菜類の煮物など
好きなおかずを並べ ....
舐められた爪を切る。指を銜えられて人の喉を触っても、引き抜くことはできなかった。喉仏を裏から触れられるまで長い爪だったらいい。指から出た精液を止めるように爪先をスクエアオフに切り取 ....
涙
猫鳴廻恋恋
人噤臥愁愁
一去知難遇
鏡中暗涙流
涙
猫は鳴き、恋恋として廻り
人は噤み、愁愁として臥す
一たび去りて、遇ひ難きを知り
鏡中、暗涙流る
....
歪みがまだ今でも
降っている真夜中
整然と聳える街灯
その首を支えたい
優しく声を掛けて
誰も気付けないの
孤高と孤独の違い
出来合いの許容心
尖っていて温いの
憐れみの ....
夜中のうちに
鍋の底で腐っていくとろけた大根が
少しでも悲鳴をあげてくれれば
わたしはすぐに火を点けて救いだしてやれるよ
*
流れる景色を見つめている
次々と集まり出すこの電車内の人、ひと、ひ、 ....
・
空が脱脂粉乳のように
薄く万遍なく引き延ばされてしろい日
うすぐらい部屋のなかで洗濯機を回している
色とりどりの洋服は不要になった皮膚のように
集められ濡らされ浮かんだり沈んだりし
渦 ....
昇る午後の軌跡には
川のかけらが硬くかがやく
何かが水に降りては飛び去り
音や光を底に残す
冬を作り 夜を作り
誰もいない道を去る
朝の雨を見る
昼の ....
昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんがいればよかったのに。
ある日、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に、
行ったらよかったのに。
おばあさんが川で洗濯していると、川上から大き ....
秋ですよ
さぁ
桜たちが裁かれます
元気ですか
健康ですか
弱ってますね
毛虫で葉っぱなくなっちゃって
もう一度咲いてください
今、夏が終わったばかりですけど
もともと四 ....
あなたの
瞳が
おくゆき
をもって着陸しようとしている
まっすぐ平行していた、している
黒線
左右のバランスがおかしい彼女は
しっかりとした楔を
そなえつけられていて
と ....
老人が残った街がゆるやかに僕を現実に引き留めてる
電車から見るだけの校舎だったのにいつから記憶になったんだ?
放射性物質の羽根で世界を羽ばたき包み愛でてやりたい
「正論で生きてます」 ....
言葉が出てこない
胸がいたい
わたしにはなんにもできない
わたしには、なんにもできない
どうやって生きていこう?
どうやって誰かを愛そう?
わたしにはなんにもできないのに
どうや ....
妹のチエと一緒にイタリアに行きました。
チエは、ピサの斜塔に会うとまっさきに
学校の近くの倒れかけた電柱のことを教えてあげました。
ピサの斜塔はにこっと微笑んで言いました。
「 ....
視力が0の後に小数点、また0
もう検査もしてもらえないぐらいの不良品ですので
眠る前(消灯)、
手を空中へ伸ばしてみたらもうなんにもなぁんにも見えなかった
ゆ、指がないよ
手首も/白い何か
凡庸な棒 ....
木曜日の午後に神様が降りてきた。
たぶん神様は姿を消したつもりなんだろうけど、気配は残ってしまっていた、
その気配というのは、疲労感が煙の様に充満していた、
世界中の問題を抱えて、その問題を宇宙 ....
子宮にピストルを撃つ爆弾撤去
産みたくないなら爆弾だ
子宮なら母体は助かるだろう
私は生きたい
愛の無い 愛の無い ああ 愛の無い
「保体で習ったろ?」 ....
笑顔は大事です
職場の花たれ
何かおかしいことがあったら
上司にすぐ伺いをたてましょう
あ、 蠅
課長、お家から連れてらっしゃったんですか?
ペット
学習は反復です
教育は ....
道端の親切にありがとうを言うおばあちゃん
電車のなか転職雑誌を広げて居眠りをするおじさん
パパの腕の中幸せそうにねむる赤ん坊
雑踏の中 たちどまるわたし
たすけてといえない教室
....
さらいにきました
年頃の女は
一人暮らしか 男と暮らしたほうがいい
じゃないと
どこか痛いとき
痛いところに布がかかってるか気にしないといけないじゃないか
終わった
いろいろと終わっ ....
風呂に入る前は 裸になる
これからきれいになる
通ってきて
よこ
子供ん頃から隣が冷蔵庫で
ここで服を脱ぐけれど
父親にも
裸を見せられないほど
洋服を脱いできた
風呂のお湯な ....
会いたい人に会えず
好きな人に好かれず
気違いだから居場所がないこと
気違いだから居場所があることの 勘定が出来ず
子供が転んだら すぐ泣くのをよく理解し
すぐ母親に 抱かれることを ....