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駅近くの喫茶の壁に
抽象画が貼ってある
焦点の合わない
橙色の幾何学模様
隅に小さく署名がある

さいたりる

若い女主人に聞くと
以前よくきていたが
最近はまったくこないという
 ....
網戸越しに世界を見つめている
そうしたときのコテツ様は
ひどく冷静で、明晰で
私は
そのしずかな横顔に憧れる

うつ伏せて
同じ目線で目を凝らすが
すぐに飽きてしまう
私は
無防備 ....
その工場には
淀むことのなく
エルガーの旋律が流れる
木管を低く震わせる安定した音色
勇壮な大河に抱かれる

誰彼の何気ない表現は
神々しい余韻を含み
小さなアイデアは
淡い発明の光 ....
明るい空から
さわさわと緑の雨が降るから
おまえの誕生日は
いつも濡れている

水色の
ローラーブレード
畳の上で
肘あてや膝あての
具合を確かめている
それは
おまえを守るため ....
ハワイは1年に3cmずつ
日本に近づいてるんだって
と君がいう
うん、いいね
とぼくたちは笑う

9才の君が
どんなに長生きしても
せいぜい3mか、そこら
それでも
いいね、とぼく ....
非常階段は
ぜんぶ空に途切れているから
僕の指先はどこへも辿り着けない

そうして
夕暮れは何度も流れて
僕の肩甲骨を
ないがしろにするのです

(お母さんに来てもらいますからね
 ....
朝起きると武士だった
(拙者、もうしばらく眠るでござる
と、布団を被ったが
あっさり古女房に引き剥がされた
長葱を{ルビ購=あがな}ってこいという
女房殿はいつからあんなに強くなったのだろう ....
  あなた、アオウミガメの背中を
  匂ったことはあって?



少女は
さして、答えを求めるふうでもなく
空と海の継ぎめを見つめたまま
潮風にふくらんだ髪を
そっと抑える


 ....
直方体オレンジさんの佐野権太さんおすすめリスト(8)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
斉田りる- 佐野権太自由詩312-4-18
コテツ様- 佐野権太自由詩8*11-12-9
希望と栄光の工場- 佐野権太自由詩5*11-11-18
水色の車輪- 佐野権太自由詩21*10-7-2
空を飛ぶ宿題- 佐野権太自由詩30*09-12-19
万引き少年- 佐野権太自由詩9*09-6-30
武士のつかい- 佐野権太自由詩58*07-2-6
回遊する少女_(アオウミガメ)- 佐野権太自由詩30*06-8-1

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