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卒業式の日に
飼っていたホオジロにリボンをつけて
冷たい空に放してやった
冬の鳥だから
冬の山へ帰してやったよ
せんせいの声も
ピアニカのドミソも
みんな憶えていたいけど
ばいばい
....
山口くんが木になった
あれは小学生の頃だった
木にも命があると
彼は言った
山口くんの木は
どんどん空に伸びて
校庭の
イチョウの木よりも高くなった
あれから彼に会っていない
....
コップのなかに
残された朝と
醒めきらないままの
水を分けあう
魚のかたちをして
水がうごく
夏のはじまり
ゆっくり水際を
泳いでゆこうとする
小さな魚だ
草となり
ただ ....
からまつの暗い林を
どこまでも歩いたような気がする
きゅうに空が明るくなって
その先に白い家があった
それは夏の終わりだったと思う
空へ伸ばしたきみの腕が
ブラウスの袖から露わになって
....
小鳥が死んだ
小さな穴を掘って
小さな葬いをした
掌にのこる
かなしみの小さな翼を
空に放つ
夢の中で
小鳥は翼を失うだろうか
ひとは翼がないから
夢の中で
空を飛ぶ
....