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手紙を入れて
春の小川へ流してやるのだ

壜はゆらゆら流れて行って
コルクの栓もしだいに腐り
水が浸み
河口近くに沈むだろう
それとも海へ流れ着き
波に揉まれ
誰も聞かない音をたて
 ....
誰かが扉を閉めてしまった
私は夜ごと出口を失くした夢をみる
扉を閉めたのは 私
そのうえ錠前を壊してしまった

壊れた錠前をまず直そうとする人は
人の心を思い遣る人
壊れた花瓶を
片付 ....
黒々と枝を拡げる
はだかの木
ひび割れた空の奥に
狼の貌が現れる

雲を裂いて
鋭く光る眼
夕陽を噛み砕く牙

ピアノ線に触れ
切れ切れに落ちる
はだかの言葉

燃えるランプ ....
おやすみなさい
今日の日は過ぎた
明日は親知らずを抜きに行く

二週間前に予約して
あっというまに
今日が来た

虫歯になっていますから
治療したとしてもどうせ
使いみちのない歯だ ....
螺旋階段を下りて行った
ぐるぐる
ねじれる記憶を
拾ってきたの
遠いこだわりを
大事そうに抱えて
あなたは私を指さして
「あなたが私を傷つけた」という
そうだったかしら
身に覚えがな ....
駅へ降り立った時
まだ空は青みを帯びていた
ちょっと買い物をした隙に
すでにとっぷりと暮れている
荷物を提げて
街灯が薄く照らし出す歩道を急ぐ
呼ばれた気がして
見上げると
鎌のように ....
古いノートに書かれた文字を
辿って行くと
余白にぶつかって
そこから先へ進めなかった私がいる

もう書けない
諦めてしまおうと
何度も思った

余白の裏に
余白の隅に
挫折の名残 ....
成層圏の牧場に
幾千匹もの
群れなす羊

どこまでも透明な
追憶の彼方

舞い降りる
黄色い{ルビ木=こ}の葉

堆積する秋

深海の底に届いた
月光のように
青ざめた記憶 ....
平然と響く
アナウンス

「一番線を 列車が 通過します
 ご注意ください」

急流の中に
取り残されてある中洲のように
ホームは心細い

トンネルの出口のように
はずれに開ける ....
空き地を渡ってきた風が
草の匂いを閃かせながら
耳もとで
ささやく
「ただいま・・・」

あっ
帰ってきたの?
君と出会ったのが
いつだったか
どこだったのか
思い出す前に
懐 ....
サーカスも消えた広場に
日付が変わった南瓜の馬車
燃え落ちた隕石
既に 青くない地球


十二色のクレヨンを握り
極彩色のテレビに見とれている児


やり過ごされていく毒の風に晒さ ....
慕情とか
郷愁とか
そんな古めかしい語句を
あてはめてみたくなる
吊り革につかまってみていた
車窓の風景

たくさんの人々の日常が
幾重にも重なり すれ違っているはずの
それでいて私 ....
コトバなんか信じちゃいけない
コトバになんて
あなたの思いを託してはいけない
コトバに
命なんか
絶対に預けてはいけません

それは持っていかれてしまう
たちまち浚われて
悪魔の手先 ....
空を滑り落ちた小鳥のように
翼をたたんで
ムクゲが地面に死んでいる

ぽとり
ぽとり
眼をとじ
命を閉じて

どこまでも拡がっていく夏空の下
次々に開く
新しい花達のふもと

 ....
プラヌラスキフラストロビラエフィラ
呪文のように覚えているのは
予備校の先生が絶対にこれだけは
おぼえておいて損はないぞと言った
生物の秘密兵器

必ず出題されると信じて
歩きながら
 ....
   象

ふるさとの草原も夕日も君は知らない。君の母親も父親もふるさとを見たことが無いからその広大さも見事さも話に聞いたことすらない。そこに憧れることもなく、ただ与えられたスペースを歩き与えられ ....
どの道も
少し進んだところでたち消える
草原の三叉路
生い茂る草は風の方角に
倒れては起き上がる波

恋慕い
探し求めたものを見失い
(つまり触れ得た事のないものの喪失のあげく)

 ....
おいてきたものに
未練はない
きれいさっぱり
忘れるのみ

遠くに
海を見た坂道も
庭に置いてきたつるバラも
咲きかけていたリラも
つぼみだった
ラベンダーも

既に
季節は ....
少し横顔を見せただけで
思わせぶりに去っていく夏

雨が 家々のトタン屋根から
ライラックの葉の一枚一枚から
信号機の黒ずんだカバーから
夏を洗っていく

雨が 夜更け ....
自分の意思で出ていくのだから
淋しさなんて
感じない

懐かしさなんて
かみしめている余裕はない

感傷に浸るかわりに
明日の夢を必死に数える

幸せになるため
一歩前へ進むため ....
泥を沈めた水田が
澄んで
さかさまに写す
熊笹
イタドリ

ヒメジョオン
ミズナラ
ブナ
岳樺
胡桃
落葉松

ヤチダモ

山はまだ若い緑で
ふんわりと盛り上がって ....
君が
はじめて私の手を離し
自分の羽根で
よちよちと
はばたいていった日のことを
母は忘れることができない

君はとうに
逞しい翼をひろげ
上空の風に乗り
母には見ることもできない ....
わたしはピクニックがしたかった

母にきくと
いいよと言った
ためておいたおやつを
バスケットに入れて
母が貸してくれたゴザを持ち
野原に行った
靴を脱いで
ゴザの上に座った
飴を ....
ねじれ歪みながら
空を指す木々が
何かを言いたがっているのじゃない

何か言いたくなるのは
それを見ている私

そうやって
ねじれ歪みながらも
空をめざすのをやめないで
吹く風の中 ....
 
うっかりしたり
どうかしていたり
つい他のことで
頭いっぱいになってたり
なんか体調でイラッとしたりして
間違ったことを言ってしまうことなんて
自分いくらでもあるんだから
他人の
 ....
ぱたぱたとひるがえるちいさな二足のズック靴
幼稚園への近道で
つないでいた手を離し
走ってもいいよというと
かならず笑い声をあげながら
細い坂道を駆け下りていった
その弾む後ろ姿を
おぼ ....
黒板にくりかえし
書いては消されるチョークの文字を
私たちは書き写した

文字は
やがて白い粉となり
先生の足元に降り落ちた

粉となる前に
書きとめなければならなかった
この手に ....
貴方の胸に耳をあてて
静かな午後の小部屋の窓に流れ込み
たゆたう木漏れ陽のような
優しいメロディを聞きたい

そんな願いを
心の闇に深く沈めて
ただ何気なく
貴方の隣に居るだけで
光 ....
先生が僕を卑怯者と呼んだ
その名前はおでこに貼りついて
やがて
僕の皮膚になった

月日が過ぎて
周りが誰も気づかなくても
僕の耳には
先生の声が時々聞こえた

先生 僕は先生のよ ....
風は確かに冷たいのに
午後の陽のぬくもりが
耳に触れた

除雪作業が終わった後の雪道は
目を開けていられないほど
強い白さだ
瞼の隙間で青空も霞む

静けさをカラスが横切っていく
 ....
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タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
- Lucy自由詩17*14-1-27
心理テスト_(詩人サークル「群青」十一月の課題「非」より)- Lucy自由詩21*13-11-13
吠える- Lucy自由詩16*13-11-10
おやすみなさい- Lucy自由詩20*13-11-5
螺旋階段- Lucy自由詩14*13-11-2
三日月- Lucy自由詩15*13-10-14
余白- Lucy自由詩13*13-10-10
赤いスカーフ- Lucy自由詩28*13-10-6
ホーム- Lucy自由詩18*13-9-30
野を渡る風- Lucy自由詩13*13-9-26
午後の祈り- Lucy自由詩19*13-9-19
夕暮れ- Lucy自由詩14*13-9-14
もっていかれる- Lucy自由詩11*13-8-28
「ムクゲの咲く朝」__(詩人サークル「群青」8月の課題「漠」 ...- Lucy自由詩17*13-8-14
ミズクラゲの一生- Lucy自由詩26*13-8-8
動物園(2)- Lucy自由詩19*13-7-17
旅の終わり____渡らない鳥に- Lucy自由詩23*13-7-13
おいてきた- Lucy自由詩13*13-7-1
夏の横顔- Lucy自由詩22*13-6-25
長年住み慣れた町を出ていく- Lucy自由詩11*13-6-20
夏の稜線- Lucy自由詩18*13-6-10
えんじのベレー帽- Lucy自由詩23+*13-6-3
ピクニック_(詩人サークル「群青」五月の課題「緑」から)- Lucy自由詩17*13-5-28
ねじれた木- Lucy自由詩18*13-5-22
自分お料理は苦手なんだけど今夜はカレーライス- Lucy自由詩26*13-5-14
坂道をのぼると- Lucy自由詩28*13-5-6
白い文字- Lucy自由詩10*13-5-3
音楽- Lucy自由詩9*13-4-27
ルピナス- Lucy自由詩27*13-4-9
待っていると- Lucy自由詩17*13-4-4

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