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きらめく翅は昔のまま時を止めている
胸を針でつらぬかれて
整然と 並んでいる 蝶々
展げた翅は風に乗れない
標本箱の中で
宙に浮いたまま止まっている
壊れないようにからだの芯を避け ....
眠魚が飛び交い
孤鳥が泳ぎ廻る
零と位置の世界
愛を捜す獣
花を忘れた荊
錆び付いた剣
響嵐の宴
その牙と
その棘と
その鋒で
永久に仇なす
疵名を結ぶ
毎夜毎晩
月 ....
水槽の底の
薄く撒かれた石床を
胸に抱えたまま
いつまでも
眠りにたどりつけない
硝子の鏡面に映る
瞳の奥、の奥
私は
銀色のマトリョーシカを
組み立てる
+
あなた ....
蝋燭ではものたりないから
うるさいシャンデリアなんかを
線香ではものたりないから
大輪の花火なんかを
菊ではものたりないから
何百という百合なんかを
むかし
現在、過去、未来
いま ....
風の止まった六月の午前
そよとも動かない樹々の枝たち
四方に延びていく電線も
雨の降らないくもり空も
何も動かない風景のなかを
ラジオの歌だけを鳴らしながら
ぼくは車を走らせていく
....
骨のような夏が街におりてくる
空はまぶしすぎて暗示しない
目を細めて輪郭や影を
確かな物にしようとしているだけで
湿った風は川からあがってくる潮の香りがする
どこか遠いところまでいつ ....
明け方に夢を見た
ミントゼリーを張ったプールに
頭から突き刺さる夢
飛板から身を投げ出した時
迫る水面は
まだ薄青く揺らいでいた
伸びきった指先が
水面を割る直前に
プール ....
こころが雨をほしがる紫陽花のころ
ぼくらは
ふたりで
紫陽花寺を訪ねる
鎌倉は
いつも変わらない佇まいで
うす水色のミストのなかに
ぼくらを包みこむ
こころが
かさかさに渇い ....
花が咲いている
花の中に海が広がっている
散歩途中の
人と犬とが溺れている
救助艇がかけつける
降り注ぐ夏の陽射し
最後の打者の打った白球が
外野を転々とする
ボールを追っ ....
眠らない
秒針の足音に
呼吸をして
風を待つ
目覚めていく
空の鼓動に
とけるひかり
あの光は
何処へ向かうのか
東へ、ただ東へ
屈辱に背中を押されても
あるべき ....
暗い夜空の街のネオンの
雪景色の
雪の結晶のように立ちすくむ男の背中の
迷いの
朝まで眠れない夢の続きの音楽の
重奏の響く街のネオンの仰ぐ
舞台装置の ....
*
不意に季節が変わった気がしたのは、強い陽射しのせいなのか
ピリピリと肌に刺す光束ねた空は昨日と別人の顔つきで
僕に微笑みかけて来た
昨日迄とは違い
灼熱を僅かにこめて笑いかけて来る
風 ....
優しさに寄生する
謝れない羽虫
霞んでも見えていた
つむじ風にさらわれて
消えてしまいそうな
細い腕を
抱き留められないのなら
この目に虹彩を埋めて
飛行
....
まだ色を持たない紫陽花は
ふつふつと泡みたいな蕾をつけて
くすんだ背景に溶け込む
重たく湿った空気の匂いがし
右足の古傷がしくしくと痛む
身体は正確に天気を教えてくれる
....
白熊が死んじゃう、と言って
つけっぱなしの電気を
消してまわる君は
将来、かがくしゃになりたい
という
撒き散らかされた
鳥の餌のシードを片づけていると
芽がでればいいのに、なんて
....
後ろ髪を引かれる
どうして
妹のように美しい髪でなかったのだろう
暮れていく陽の
もう少しだけ、
を残した
闇が束ねる
手つきはやさしくて
頭をかしげる速度で
すべて委ねてしまいたく ....
そなたは夕顔をしている
両目が回転する
ロックアイスを部屋中に反射する
瞼が目だけを慈しんでいる
開いている間の暗闇は不穏だが
閉じている間の暗闇はやさしい
野方図な木々を風よ ....
哲学の猫が
書物に足跡を残して
そこで終わってる
残されたページには
いつもの海と
青い空
さえ何もない
私は猫を探しに行く
足跡を残して
そこへ辿り着くまで
....
歪んだ真珠を抱え込む
背中を丸めた少女たち
世界は平衡をなくし
遠近法は意味をなさない
耳元でささやくのは
畸形の妖精
足元にうごめくのは
手足をなくした娼婦
....
髪を切る音
霧に落ちる道
羽と火の音
氷の船
高く奇妙な階段の家
ある日消えたあとの空地を
ひとつふたつすぎてゆく声
影のなかをすぎる影
海に沈みか ....
きっと/ふゆの/かおり/のせい
興味として刷いた眉が
何故にそんなにも難しい顔をするのか
うすい唇を尖らせて
私に何か言おうとする、
そののどが
気絶する/ほどに/しろい
夏はまだ始 ....
深紅のイチョウが
月夜の湖に鮮やかな
色彩を描き出す
底の見えない水溜まりに
興味本意に足を突っ込む
そのまままっさかさまに
落ちていずれ反対側にたどり着く
....
もう
咲いちゃっているのね紫陽花
雨季の藍色を集めて
水の器ハイドレンジア
入梅前の
まだ青い空にはコアジサシがふわり
無重力下のブーメラン
六月のジュゴンに伝えてください
皐 ....
余裕、
事物としてでなく
魂の電線、
ギター。
路上に仕掛けられた
木片ーその下で
丸い火薬粒が
出番をひかえている。
役者であると同時に
観客である 少年たちは
電信柱 ....
東の空に夜が這い出て
闇は
何もかも消し去った
濡れた瞳も
ぜんぶ、ぜんぶ
指先の温もり
錯覚
あなたには届かない
もう
声も、想いも
ぜんぶ
ぜんぶ
....
指輪の輪の中に星を見た。
指は星をも貫く。
これだけ些細な優美。
されど骨までも、星の強靭な円によって支配されていようとは。
まさか気ままであるはずのこの眼さえ ....
貴方の影を決して踏まぬようにと
いつも三歩下がって歩く癖が
いつしか身に染み付いていた
夕暮れに伸びて行く影法師は
遠のいて行く貴方の背中、貴方との距離
沈む夕陽を従えるように
貴方は歩いて行 ....
みえるものは
たとえば、光るに足らない星たち
それは遠く、遠くにいる
だいじなともだちの
からだに巻きつく
スパンコールの糸でんわ
暗がりでもこわくない
ほらね きみがいる
....
初めての朝は海の中で目覚めた
期待に似たものに満ちた光と
生まれたままの姿で
あの人と二人浮かんでいた
私はすごく幸福で
そうして少し悲しかった
こんなに幸福な朝は
二度とこない ....
夏の夜に雪をふらせて
ねこの言葉を聞き分けて
なにものからもわたしを守るバリアをはる
よごれた世界は電気みたいに
わたしのまわりを取り囲むけれど
わたしを闇に隠してくれた夜が ....
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