すべてのおすすめ
植木鉢に身を{ルビ埋=うず}め
体中に
針の刺さった
裸の人形
{ルビ腫=は}れ上がる両腕のまま
{ルビ諸手=もろて}を上げて
切り落とされた手首の先に咲く
一輪の黄色 ....
雨上がりの高尾山
散策の一行は
山を愛するおばちゃんのガイドに
耳を傾けながら
濡れた山道を往く
ある者は
ひとすじの細い茎の上に
寄り添い
束ねられた家族のよう咲く
....
喉が渇いたので
駅のホームのキオスクで買った
「苺ミルク」の蓋にストローを差し
口に{ルビ銜=くわ}えて吸っていると
隣に座る
野球帽にジャージ姿のおじさんが
じぃ〜っとこ ....
僕は 詩 というものの縁で、幾人もの友と出逢ってきた。もう会
わない友もいれば、長い付き合いになるであろう友もいる。かけが
えのない友がいながらも、僕等は時に「ひとり」を感じてしまう。
そ ....
コンビニのレジの後ろに
「 迷子です 」
と貼り紙のついた
こどもの靴が置かれてた
つまさきをそろえた
寂しげな迷子の靴
なぜかぼくの足にぴったりに思え
後ろ髪を引かれ ....
ひとりの部屋で
哀しい唄を聞きながら
歌詞を机にひろげて読んでいると
窓からゆっくり日は射して
机を覆う影は
波のようにひいてゆく
*
窓の外を見ると ....
緑の葉を一枚
唇に{ルビ銜=くわ}え
言葉の無い唄を奏でる
黒い影の姿で空を仰ぐ
わたしのまわりが
ひだまりとなるように
* この詩は「詩遊人たち」 ....
子供の頃
両親のあたたかなまなざしに
まもられて
幸せはいつも
「 そこにあるもの 」
だった
やがて大人になり
自らの手を伸ばし
{ルビ掴=つか}もうとした
....
ひとりの少年が
壁をつたうパイプの上を
猿の手つきでのぼってる
壁の頂で少年は
( 見ざる・言わざる・聞かざる )
のおどけたそぶり
次の瞬間
頂から
両腕ひろ ....
昨日は職場のおばさんの
くどい{ルビ小言=こごと}に嫌気がさして
かけがえのない他の人さえ
土俵の外へうっちゃり
しかめっ面でひとり相撲をしていた
昨晩見た夢のなかで
旧友 ....
だうな〜で
仕事さぼった翌日に
こころの{ルビ垢=あか}・{ルビ錆=さび}ふりはらい
いつものバス停に向かう
歩道の
前を歩く女子高生
突然ふりむき
( すかーと ふわ ....
夕暮れ
いつもの通学路で少年は
独り咲いている
紅い花をみつけた
家に帰り
父と別れた母に話すと
「 毎日水をおやりなさい 」
と言うので、次の日から
少年はいつも ....
「Le Poete」(詩人)
という名の店が姿を消した後
新装開店して「Dio」(神)
という名のピザ屋になった。
消えた、前の店と同じく
ピザ屋は毎日空席だらけ
カウ ....
夕陽をあびる
丹沢の山々に囲まれた
静かな街の坂道を
バスは上る
時々友の家で
深夜まで語らう
( 詩ノ心 )
午前三時
友の部屋を出て
秒針の音が聞こえる部屋 ....
丘の上の{ルビ叢=くさむら}に身を{ルビ埋=うず}め
仰向けに寝そべると
空は、一面の海
宙を舞う 風 に波立つ
幾重もの{ルビ小波=さざなみ}を西へ辿れば
今日も変わらぬ陽は ....
昨日の仕事帰り、バスに乗る時に慌ててポケ
ットから財布を出した僕は、片方の手袋を落
としてしまったらしい。僕を乗せて発車した
バスを、冷えた歩道に取り残された片方の手
袋は、寂しいこころを声に ....
残業の仕事につかれて夜道を歩いていると、
遠い空の下にいる君の声が聞きたくなり、
携帯電話を持たない僕を、
闇に光る電話ボックスが声も無く呼んでいるようで、
僕は今夜もガラスのドアの中 ....
地下鉄の風に吹かれて
灰色の階段を上がる
地上に出る前に
用を足そうと
便所にゆく
入口に
「 只今清掃中 〜そっと入ってください〜 」
という看板が立っており
....
しんかんせんが はっしゃする
ぐんぐんとはなれゆくきみのすむまちへ
ことばにならぬおもい
かそくするしんこうほうこうにさからって
きゅっ とくちをつぐんだまま
きみのことを すき ....
ひとりの人間の哀しみに
わたしは立ち入ることができない
十日前に夫を亡くした同僚の
目の前を覆う暗闇に
指一本たりとも
わたしはふれることができない
( 背後から追い立て ....
目覚めると
駅のホームの端に立つ街灯の下で
粉雪はさらさら吹雪いておりました
次の駅の街灯の下で
雪は舞い踊っているようでした
その次の駅の街灯の下で
雪はまばらに降っ ....
今、発車前の夜行列車のなかで
この手紙を書いています。上野駅
は昔から無数の人々が様々な想い
を抱いて上京する駅なので、昔と
変わらぬ空気が今も残っている気
がします。
先程、少 ....
目の見えない人が歩く
前にいる友の背中に手をあてて
目の見える僕も歩く
いつも前にいる 風の背中 に手をあてて
そうでもしないと
ささいなことで気ばかり{ルビ焦=あせ} ....
幼い頃に広かった幼稚園の庭。大人になって訪れると
不思議なほど狭くなっていた。密かに憧れていた保母
さんは、ふたりめの赤ちゃんをだっこして。お腹の太
ったおばちゃんになっていた。
年を重 ....
一面に広がる{ルビ金色=こんじき}の
麦畑の上に浮かぶ
一本の道
飛び込み台のように
道の途切れた向こうに浮かぶ
{ルビ一艘=いっそう}の船
途切れた道先に
組んだ ....
見上げると
ひらひらと北風に舞う
たましいのかたちをした
まあるい葉が一枚
落ちてきた
{ルビ煉瓦=れんが}の{ルビ椅子=いす}に座ったぼくは
腰をかがめてそれを拾うと
....
壁の取っ手にかかった鍵は
{ルビ紐=ひも}がほどけてするりと落ちた
それを拾って結んだぼくは
壁の取っ手に再びかけた
( 紐をつまんで手にした鍵は
( いつも人の心の鍵穴に
....
旅の終わりに訪れた
夕暮れの善光寺
{ルビ巨=おお}きい本堂脇の砂利道に音をたて
紫のマフラーを垂らした
小さい背中の君が歩いてた
「 あの・・・○○さん・・・? 」
....
夜行列車「能登号」車内
すでに電気が消えた
午前二時十五分
数えるほどの乗客は
皆 {ルビ頭=こうべ}を垂らし
それぞれの夢を見ている
一人旅に出た僕は眠れずに
開い ....
疲れた顔したあなたの前に
一杯のお茶を置く
( そこにいてほしい
( くつろいでほしい
長い間
心に固く閉じていた
{ルビ蓋=ふた}を開いて
今までそっとしまっておい ....
1 2 3 4 5 6 7