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午後五時ちょうど
わたしは両足をひらきます
まぶたの向こう側で
色落ちた石壁に描いたあの人の姿が
ため息に吹きさらされて
薄れてゆくのを眺めます
そのたびに
西の空から一斉に
....
膨らんだ真っ赤な少女が綻べば真綿の雪に椿がぽとり
体内で春を待ちきれずに芽吹く血潮に染まった椿のつぼみ
花びらを散らさぬように雪の上そろりと歩くも染みが点々
赤い紅 ....
冷えきった繋いだ手と手を温泉で去年の炎暑を取り戻そうとす
耳元で優しく君が囁いたあの夏のさよならを海で泳がす
夢うつつ瞬時に散りゆく白昼夢、儚く消える思い出花火
....
わかれみち夕陽が君を支配する今日ほど夕陽を妬んだ日はない
落胆と転がる小石と空の雲蟻の巣すずめ手をつなぐ最後
焼け爛れ燃えゆく西日吸い込めばわたしに残る君は焦げるか
ままごとの続きと ....
泥のついたじゃがいもを手に取り
母さんはわたしへと目を向け
折り返し台所の窓に映った自分へと
そして再びわたしへと目を戻す
心なしかじゃがいもの泥を洗い流すときの
母さんの手は力 ....
赤いランドセルは女の子の特権よ
真っ赤な真っ赤なランドセル
その中に
金魚の群れを飼っている
小学校三年生の夏
真っ赤なランドセルをせおって歩く姿に
隣の家のえみりさんを ....
たろうが好き
たろうが好き
好き
好き
一番好き
何よりも好き
好き
たろうの癖も
たろうの嘘も
すべてを知って
いるつもり
つもり
つもり
つもり
....
制服の短いスカートから伸びた二本の白い柔肌の足
繭糸を紡いでできた足の線混ざりけのない清潔な線
きず口を塞ぐかのように押し込んだあなたのそれは何かを語った
....
朝
目覚めましたらそれはそれは
パパもママも窓の外を歩く人も皆
片方の手に小さな人が絡み付いていまして
乳白色の柔らかそうな人が絡み付いていました
五月に入ったばかりだったので ....