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カウンターのまえに生簀がある
生簀のうしろで二人の板前が
包丁を手にして僕たちの注文を待っている
弟と〈活定食〉というものを頼んだら
すかさず板前が網を持ち出して
生簀から魚を二匹すくっ ....
もしこの世界に音楽がなかったら
寄せては返す眠りのうちに
わたしの意識は夢を見るように
この世界に背を向けて
目にうつることのない
美しいものに想いを馳せていたことだろう
音楽が鳴る
....
強くゆきすぎるものがある
揺れる信号機
交差点を走るのは
車ばかりじゃなく
あまりの
(不可視の)
存在感に
帽子をおさえる
目をつむる
スカートを ....
芝生に日かげが射して
まぶしいキャンバスに
夕がおとずれた
筆をはこぶひとの
手をなでるようにして
風が立ち
描きかけのキャンバスは
ばったりとたおれた
筆をはこぶひとは
草 ....
遠くにたなびく雲たちが
かすかに色づきはじめた
広くひらけた空
あんなに遠くにと思われた空は
見上げると
ふれられるほどに近かった
象の親子のかたちをした雲がやってくる
風にのっ ....
わたしたちは知らない
夜の闇のいちばんふかいところで
じっと目をとじ 夜をつむぐ
夜の織り人がいることを
あらゆる夜の恩恵をもたらす
ものを語らぬ夜の織り人がいることを
夜のしずけ ....
するどく、狂おしく
燃えるものはなんでも燃やせ
沈むものはなんでも沈めろ
飛び立つものはどこでも飛び立て
足があるならひたすら走れ
腕があるなら意地でも掴め
頭があ ....
できうるかぎり、ゆるやかに
矛盾を打毀すには
ひたすら主観的になれ、ひたすら主観的になれ
すべて我をもってして行動に及べ
どうせ雨にうたれてしまうのなら
そのまま海で泳いでくるが ....
徹頭徹尾、疾走して
しかし敵は言葉そのものにちがいなかった
いちばん近くにありすぎて
誰も言葉が脳みそのジュースを
ストローでおいしく啜っているとは
思いもしなかったのだ
それ ....
大切なものをわすれてしまった
気がするけど
何をわすれたのか思い出せなくて
それはすでに
わすれたことをわすれたのと同じように
もう意味なんかなくて
でも
あんまり利口じゃないから
ど ....
すこし暗くなった
デスクのライトをつけたら
もっと暗くなった
暗闇を明かりが照らすと
なおのこと闇はその色合いを増して
本が読めなくなる
というよりも
字が
読めない
この黒い字が
....