すべてのおすすめ
呼吸をさまたげるぬるい真綿と
つめたいくさび
命には届くまいと言い聞かせて
悲しみが訪れてくれるのを待つ
何もかもを涙に流せる静謐
繰り返しの記号がとめどなく
胸腔を破ろうとさわぎ
....
かすかな気体が母音をまねて
つつましく
遠くの空をながめる子
瞳に映る季節、また季節
繰り返される慈しみ
陽射し
向こう側へ手をふる
帰れないと知っても
魂は旅をするかしら
平行 ....
涙をくみあげる ゆびさきの淡い痛みが枯れるときは来ない
かぎりない往復は いくつもの色で潤滑されて
かなしみの精度をふやし
五官のうつせみにくりかえされる干満
光のない静寂には 距離をはかるの ....
痛みのない世界の
封を切れば風は青白くふいて
ビルの合間を見つけては
切先をくねらせる
光がこぼれるまで
誰も空を見つめないから
ちいさな浄罪として
足元に種をまいても
温度はなく
....
きせつはずれの
あなたは はなぐもり
きたかぜを てまねいて
ふるさとのにおいだと わらった
せまくるしい すいめんに
もうすぐ ほしのかがみが
やってくるはずなの ....
小さな凧になって
白い干潟の方へただよっていく
そんな夢をみた
空はいつもの人見知り
いそがしく雲がゆききして
染まるべき色を探している
そんな風力2の午後だ
遠くの街の錆びた街路樹に
薄紅色の吐息が咲く
秘密めいた儀式は終わりがない悪夢によく似て
通りすがりの足音を数える孤独な作業みたい
蛇口からほそく水を落とす
鉄くさい地 ....
それぞれに運命を入れた容器たちの
つかの間に折々
わずかな光を胎動し
森のかたちにふくまれていく
欲しいからだを差し伸べる
天使たち
祈りをおびて瑠璃色の
小箱にひそめ ....
こよみが裏切られ
木々は途切れ
老いた田園に
祈りを帯びた青い雲
荒れ果てた放棄地に
にがい風はとどまる
ちいさな歌を弔うため
花の名前を指折り
陽射しを受けとめる
古い石積み
繰 ....
凪いでる 凪いでる
ここはがらんどうの海
無風世界
石をちりばめる
空にちりばめる
ゆびさきがぬるい
目にしみる涙
んっ んっ
母をよぶみどりの子
宛て先な ....
春すぎて、白妙
きみのひとみを覗く
彩られた虹
星のかたちをそのままに
人知れぬ森の底で
空を待つ火種の連連
泉のなかに息をこらし
選ばれる日までを指おる
夜霧を ....
夏のなごりの草原で
天使と悪魔が背比べしてる
人恋しさがゆきつく場所は
越えられなかった声の向こう
枯れかけの街路樹で生まれた虫の
青い方へ 青い方へ
こずえを目指す早足な痛み
草原 ....
北の国で少女は
歌を集めて翼を織った
旅してゆきたかった
生ぬるいかげろうの季節に
歌はそこら一面で摘まれ
籠のなかでちいさく鳴いた
迷子になったひよこたち
草原を季節風が ....
牽かれていく二すじの偏光
孤独な少年の手なぐさみ
自転車にまだ補助輪があったころ
ぼくは愛されていたかしら
いなかったかしら
初夏の予感が初めて来たとき
駅前通りに二匹の妖精 ....
新しい暦が生成している
遠い国で洗い上がったシャツの匂い
ためらいと高揚
背中に触れる唇の温度
インディゴに溶け込むマゼンタ
梢たちを過ぎて
吹き下ろす視点から
....
君がリリアン編んで
見上げた空は花と同じ色で
ぜんぶ、ぜんぶ春だった
ゆびさきで、光源をたどる
なくしたもののかたちは
思い出せないけれど
なくしたものから芽ぶいたのは
街でいちばん ....
新しく作られた神様を
ひび割れた背中にぶら下げて
くすんだ野道に そぞろの巡礼
通りすがりの南風から
千年前のにおいがする
中空いっぱいにひろげた彩度の
かけらだけでも ....
遠くのほうで 貝殻色の天蓋に
やがてちいさな穴があき
こぼれる石笛の一小節を縫い付けた
あかるい羽衣の 恵みを象徴してもたらされるもの
鉱物たちがふくんでいる 大きな知恵の営み ....
飛べない魚が
雲の中から這い出してくる
ふるい戦闘機のなきがら
双胴に牡蠣殻のいちめん
酷使されたラジオから
喉をさいて響く歌
あたたかいミルクを呼んで
冷たい夜に泣く ....
夜にざわめく
海原にちいさな風
ひかりを求めて
さかなたちが踊る
爪月のほとりに
熱がつづく
眠りを急いて
夢を強いて
はこばれるすべて
行き来する波
呼吸のやりとり
は ....
墨染めの空を映して
ガラス、ガラスの群れ
強い光の訪れを
救済に灼かれる日を
待つ
立体交差の雑踏
四方向に
連れ立つことなく
分かたれることもなく
人々は歩い ....
空のひとすじ
とぎれとぎれに
たましいたちの渡り
祝祭の予感が
はりつめて街に灯る
肌をかさねる
こいびとは柑橘の香り
湿り気を母音に換え
いくつも降らせ
打ち上げて
土く ....
感覚を駆って
熱と湿度が飛び交って
ふたつの身体を高めていく
星間飛行の鈍色の船体が
故郷の水を恋しがって
恒星の配列をなぞるように
五感が跳ねて
目を閉じているのに ....
綿毛の海で泳ぐ
後ろ姿を探す
秋の始まる午後に
あたたかさとつめたさの両側から
等しく守られていることを知った
星の人から届けられる
言葉によらない通信を
言葉に変 ....
やさしい光の数々は レントの風に乗って
流れていきます
どこへ向かうのか 知ることはできないけれど
きっと幸福があると推測するので
ぼくはこの身を任せて 光と一緒に
流れていこうと ....
かり かりらん からん
鉦の響きが行列を先導する
満ちていく途中の
なまめいて誇らしげな月の下
馬の背には選ばれた幼子
金襴にくるまれて
視線を集める戸惑いを隠せず ....
ヒガンバナが今年も灯る
曖昧を許さない輪郭で
そのくせひどい曖昧を宿す
秋に咲く大輪は葉を持たない
何もなかったところから花火みたいに
茎だけで伸びて
夢見がちなひろがりではじけて、 ....
海になる体へ雷の槍をふらせる
うねる波の頭の
ひとつひとつへと
国産みの神を模倣して
空になる体は
すみやかに 確固とした
愛の執行を撃ちつける
脊髄どうしがリンクして ....
赤い感情と青い記憶とを
つむいで
むらさきを織る
夏の恋
ひざまでの深さのつもりで
いつのまにか飲みこまれている
息継ぎに顔をあげるたび
水面にゆれる ほほえみに似た光を
肺にかさ ....
恋慕の奔流に身をまかせるとき
にじみ出していく熱がある
言葉にできないものを
言葉にしなければならないとき
この唇が無力であるとき
胸腔におさまりきらず
とめどない疼き
....
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