すべてのおすすめ
風は呼ぶものではない。
風はじっと待つものだ。
あの日、
あなたは泣きながら、
私にすがりながらそう言っていた。
娘である私の拳は震えていた。
握りしめた拳は赤く腫れ上がり
皮が剥け ....
あらゆる毛皮という毛皮を剥いで、
あなたをただ見つめる。
そこからはまるで、
万華鏡か走馬灯になった
私たちが見える。
私は手元を見つめる。
もうこれしかない。
新宿東口の街の片隅で、
....
無知のまま、知ろうともないで、
ぐりぐりと孔をまさぐるあなたは、
ややもするれば悪になってしまう。
あなたという私の憎悪を、
優しく抱きしめる、
あなたの腕が皮肉にあたたかい。
私はその腕 ....
木枯らしが吹くビルの下で
私は一人佇む。
北風が、
繊維の隙間をすり抜けて、
肌に差し込む。
私は皮膚という皮膚の
口を大きく開けて、
舌に降り注ぐ血のぬくもりを抱きしめる。
あ ....
そのあたたかい頬に触れると、
私のなかで握りしめた、
生まれたてのあたたかなものが、
少しずつ剥がれていくの。
その剥がれたもののなかにいるものは、
胎児のような私で、
私ははじめて触れる ....
(ダレカダレカ解放シテクレ、
コノアツクルシイホドノ抱擁カラ)
私は時々、
私を抱きしめている、
この腕を暑苦しく思う。
私を抱きしめている私の腕を。
この腕には沢山の鍵が掛けられてい ....
(この男、殺したい )
私がはじめて、
胸のなかにナイフを握ったのは、
まさにこの瞬間だった。
その男は私に出会うやいなや
(アオイサンテ、
ソノ足ハ障害ナンデスヨネ、 ....
蟹は、
何かの匂いを感じると、
月をぐるぐるまわるように、
先へ先へと急ぐ。
何かの匂い。
それは芳しい花の香りではない。
じっとりとした、
タールのような
油 ....
ちくちくちくちく、
縫い針が私の影を追いかける。
縫う主はにこにこにこにこ、
暑すぎる笑みを浮かべながら。
オネエチャンハココノヒトデスカ
(ワタシハオネエチャンガタベタイ)
ヨカッタラオ ....
私の手は汚れている。
いつも茶色く汚れている。
正しくは、化粧品の茶色い色だ。
爪もいつも、
黄緑色に淀んでいる。
顔のなかを蟻が這う。
私は痒さに爪をたてる。
その爪についた汚れが、 ....
切れた指の皮膚の、
先端から咲いた小さな焔が、
野を駆けるように、
街へと拡がっていく。
私の思念のなかの街へと。
思念の街には色々な人が住んでいて、
皆、凍えながら何かを待っている。
....
口から耳を吐き出す。
耳は目になって排水口を流れていく。
目になった耳は明日の壁を踏みしめて
雑踏を突き進む。
耳が吸い込む声は、
いつだって罵倒と嘆きだ。
けれど耳は、
罵倒の皮を ....
真夜中に映し出された、
渇ききった林の奥の瞳は知っている。
ほんとうは、
誰にも何にも、
降る雨などないということを。
それは与える愛ではなく、
誰の胸の奥に必ず咲いてしまう
甘ったる ....
アンタガワルイノヨ、
ゼンブアンタガワルイノヨ、
アンタガ、
アンタガ、
三半規管を往来する
嗄れたあなたの声が、
私の耳から喉に谺する。
私は何故か言い返せない。
なぜなら私はあ ....
『奇跡』 あおい満月
あなたは私を、
べしゃべしゃになるくらいに
叩き潰した。
私は鏡にそれを全部叩き映した。
あなたはそれを知らないままに
私を思い通りの ....
私の耳は雑踏を歩く。
歩きながら無数の罵倒を食べている。
ある声は街中でぶつかりあった肩に
舌打ちし、
ある声は、休日の電話に悪態をつき、
ある声は、暖かな午後に寒いと言って愚痴を吐き、
....
私はことばを貪りながら
あなたをワルモノにかえる。
ワルモノ、わるもの、悪いもの、
割れるもの、
あなたは林檎のような赤ん坊だ。
いや、赤ん坊のような林檎だ。
私はがりがり林檎をかじる。
....
私のすべてに帰依するもの。
私から外へ帰依するもの。
消えていく、あるいは、
はじまっていく暗い闇さえ、
今は一筋の光に照らされている。
手にした者しかわからない、
痛みとぬくもりが、 ....
切りつけた樹皮のような皮膚からの
血の疾走が止まらない。
血は螺旋になった虹のように、
この腕を伝いおりていく。
かたかたかたかた、
血の足音が三半規管を通過して、
押さえられた手のひらに ....
彼女は、柔らかな鋭い魔物に
背中を喰われている。
しかし、
実際は彼女が魔物の耳を
自分の喉の指に押し込んでいる。
魔物を押し込んだ指が嗤う。
からからからから、
喉の奥の水車小屋で
....
驟雨になって過ぎていく時間の中で、
詩を書かせてくれないか、
誰かが囁いた。
誰かの声は確かに、
黒いペンで、
と言ったはずなのに、
私は赤いペンを背中から差し出す。
私は赤いものば ....
誰がさまようというのだろう。
この名もない路地を。
名もない路地には、
ひと影はなく
だから名もない路地と
なったのであろうが、
名もない路地には、
人影は確かにあった。
その人影は、 ....
救済するために、
骨を食いちぎらなくてはならない。
救済するために、
歯をもぎとらなくてはならない。
救済するために、
皮膚を剥きとらなくてはならない。
救済するために、
肉をかみちぎら ....
あなたの大きく開いた口が、
ちいさな海を吸い込んでいく。
あなたの脳裏を走る列車が、
いくつもの駅を追い越していく。
駅には、
誰もいない人で、
あふれている。
あなたは、
誰もいない ....
あなたは今、
いろいろなことばの海を
旅したいと思っている。
そこには淡い色の薔薇の花束のブーケだったり、
あたたかな木のぬくもりの漂うキッチンだったり、
そんな風景が香ることばを探している ....
手を握りしめたまま、
遠く海の彼方から
やってくる風を待つ。
風は、
あらゆる氷山を突き破り、
たったひとつだけ、
この指に絡みついてくる。
このたったひとつの風は、
幾多の激流を乗り ....
脳髄の奥底で、
渦巻く怒りに似たことばは、
構築を知らぬまま
進むべき道の足跡ばかり探る。
*
机の上に仮面が置かれている。
仮面は口元をカッターでなぞられたように
笑っている。 ....
黒く透明な魔物にとりつかれた指は、
もう止まらない、
もうもどらない、
指が進む先は、
まっすぐ なようでかなり
曲がりくねっている。
指には耳がある。
かなりたくさんの耳だ。
無数の ....
ことばを欲しがる指先が、
熱を帯ながら、
水面をぴしゃりはねる。
指先の熱が水を伝って、
水面に映りこむ私の唇に話しかける。
熱は針のように鋭い薔薇の棘になって、
私の唇を抉じ開け、
舌 ....
沸騰する憂鬱を、
跳ね返すことばが、
さかなになって脳裏を横切っていく。
それを掴もうと、
手を握ったり開いたりしてみても、
私は海底に沈む難破船になって
視線を落とす。
*
....
殿上 童さんのあおい満月さんおすすめリスト
(164)
タイトル
投稿者
カテゴリ
Point
日付
冬の針
-
あおい満 ...
自由詩
5*
16-1-11
毛皮
-
あおい満 ...
自由詩
6
16-1-10
葱を刻む
-
あおい満 ...
自由詩
8
16-1-10
崖の上
-
あおい満 ...
自由詩
8
16-1-9
雪
-
あおい満 ...
自由詩
5
16-1-7
小指
-
あおい満 ...
自由詩
6
16-1-6
箱
-
あおい満 ...
自由詩
14*
16-1-5
月に祈る
-
あおい満 ...
自由詩
7
16-1-3
骨
-
あおい満 ...
自由詩
3
16-1-2
子宮
-
あおい満 ...
自由詩
11*
16-1-1
手紙
-
あおい満 ...
自由詩
6*
15-12-31
すべりだい
-
あおい満 ...
自由詩
7
15-12-31
薔薇
-
あおい満 ...
自由詩
7
15-12-30
いのり
-
あおい満 ...
自由詩
5
15-12-28
奇跡
-
あおい満 ...
自由詩
7
15-12-27
歩く耳
-
あおい満 ...
自由詩
6
15-12-26
なみだ
-
あおい満 ...
自由詩
6*
15-12-26
コンクリート
-
あおい満 ...
自由詩
5
15-12-25
骨のなかの血
-
あおい満 ...
自由詩
7
15-12-23
疾走する彼女
-
あおい満 ...
自由詩
6
15-12-22
ナイフ
-
あおい満 ...
自由詩
7
15-12-21
ちぎり
-
あおい満 ...
自由詩
6
15-12-19
救済するために
-
あおい満 ...
自由詩
5
15-12-19
腕輪
-
あおい満 ...
自由詩
7*
15-12-17
大樹
-
あおい満 ...
自由詩
14*
15-12-16
狡猾な力
-
あおい満 ...
自由詩
5
15-12-13
地図
-
あおい満 ...
自由詩
9
15-12-12
耳
-
あおい満 ...
自由詩
9*
15-12-10
シーツ
-
あおい満 ...
自由詩
6
15-12-10
空
-
あおい満 ...
自由詩
10*
15-12-9
1
2
3
4
5
6
すべてのおすすめを表示する
推薦者と被推薦者を反転する