すべてのおすすめ
 
豆腐がテーブルの下に入ったまま
出てこようとしない
いくら呼んでも
何の反応もしないでじっとしている
仕方なく椅子をどけて
自分がテーブルの下に入る
特に豆腐に恨みがあるわけでも ....
 
 
手の知らない言葉を
書き続けていく
手のすることはすべて
わたしを助けるのに
わたしのすることのすべてが
手を助けるわけではない
途中、水が足りなくなって
手を洗いに行く
 ....
 
 
水で出来た線路の上を
指列車がやってくる
わたしは道路の言葉で話しかける
指列車は親指を振って応えてくれる

空から墜落しそうになっている空を
真夏の工場群が
かろうじて支え ....
 
 
三角定規が数ミリ単位でずれて
安アパートが崩れた
確かに昔、ぼくはその二階の
日当たりの悪い角部屋に住んでいたけれど
何度か前を通っても人の気配がなかったので
もしかしたらぼくが ....
 
 
梅雨の湿った風に吹かれいると
いつの間にかぼくと妻は
古ぼけた感じがする列車の
最後尾の座席に並んで腰掛けている
列車はカタンカタンと
紙のイメージの中を
ゆっくりとしたリズム ....
 
 
時計の断面が落ちている
側に誰かの置いた花束がある
初夏の陽射しは影をつくり
わたしはわたしの影を
地面に埋めていく
勝者などいない
敗者だけの戦いが終わったのだ
イワシの缶 ....
 
 
道の記憶
識別された日常の中を
人は歩く
そして
人は脆い
ぐにゃりと背骨の曲がった自転車が
無灯火のまま夜の街を走る
やがて洋品店の前でひとつの海になる
街中の甲殻類が次 ....
 
 
わたしが金魚の頭を
撫でているころ
ぼんやりとした扇風機は
薄暗がりの中で首を振り
幼い子どもが一人
どこかで帰る家を探している
ここだよ、と言っても
それはきっと
ただの ....
 
 
手からファイルが滑り落ちる
その先に空がある
とめ具が外れて
出鱈目な順序で書類がばらばらに舞う
書類から
印刷された文字も手書きのメモも
剥がれていってしまう
牧場の真ん中 ....
 
 
窓を開けて欲しい、と男は言った
壁しかない部屋だった
窓を開けた、とわたしは嘘をついた
男は両手を広げると
嘘の窓から青空へと飛び去った
ひとり残され
部屋を丁寧に折りたたみ
 ....
 
 
誰かのための
湿った窓がある
三本の線を反復できずに歩いて渡る
蟹たち
をわたしは避けて
自分の指の形がいつもより気になったので
どこかに忘れてきた雨傘の代わりに
古道具屋で ....
 
 
白線の内側に下がってお待ちください。

白線は自分で引いてください。

内側と外側は自分で決めてください。

白線の外側を
一匹のシオカラトンボが横切っていく
軟らかくて
 ....
 

雨が花の形を整えていく
わたしたちは共通の言葉で話し
共通の言葉で
触れるべき場所に触れる

民家の前にぽつりと置かれたバス停で
傘を差してバスを待つあの二人は
親と子なのだろ ....
 
あなたに似た人と
あなたの名前に似た名前の人が
あなたに関連のないことを
頁の片隅で語り続けている
数日間降雨の無い乾ききった道を
一台の軽トラックが
砂埃をまきあげて走る
そして ....
 
 
近所のフランス人が遊びに来て
ニンジンを食べて行った
日本のニンジンはとても美味しい、と
たいそう喜んで
お礼にエッフェル塔の置物をくれた
大きさからしてどう見ても
偽物のエッ ....
 
 
ワイシャツにアイロンをかけているうちに
見知らぬところまで来てしまった
さっきまでいっしょにいた妻や娘の姿も見えない
どこか淋しい感じのするグラウンドで
赤勝て
白勝て
子ども ....
  
 
ぼくの中を犬が泳ぐ
きれいな犬かきのフォームで
どこかにある向こう岸を目指して
一方ぼくはといえば
水の中どころか
空気の中でもうまく泳げない
手足を無駄にばたばたさせて
 ....
 
 
卵に言葉を教えた
教えた言葉を
卵はすべて覚えたけれど
口がなかったので
話をすることはなかった
雲が形を変えながら
夏の空に消えていく
わたしが生まれてから
何度も見たそ ....
 
 
門のところにクラゲが大量に発生していた
透き通ってきれいな形をしているのに
触手に毒のある種類なので
外に出ることもできない
裏門から出ようとしても
この家には裏門がないし
裏 ....
 
 
朝、食卓の上に
動物園があった
雨が降っていた
動物たちは雨に濡れて
毛が硬そうに固まっていた
わたしは雨に濡れないように傘を差し
立ったままトーストを食べた
動物たちはわた ....
 
 
世界の果てに
ベッドがひとつ
ぽつんとある
父が横になっている
わがままばかり言って困る、と
母から連絡を受けた僕が
その隣に立って
父を怒鳴りつけている

親に向かって ....
 
 
カニの甲羅に
雪が降り積もる

ブランコは揺れる
誰かの言葉の
力を借りて

食べ飽きてしまったね
紙の形は

自分の目を覗き込むと
動いている人の
背中が見える ....
 
 
習ったばかりのルートの記号を
少年はノートに書きました
丁寧に書いていたはずなのに
最後に記号は壊れてしまいました
わずかな隙間から覗き込むと
自分が幼少時を過ごした町の海が見え ....
 

 
父はサボテンでした
とげはありませんでしたが
サボテンでした
水を蓄える仕組みがあるわけもなく
少しの水では生きていくこともできませんでした
ましてや荒野に一人
じっと立っ ....
 
 
桜の花びらに見えましたが
それはお墓でした
とても小さな墓石でした
とても小さな人が
入っているのだと思いました
ところどころ緑に苔むして
たしかにそれでも
桜の花びらに見え ....
 
 
今日はワカサギが良く売れる
いつもは店の奥まったところに並べているだけなのに
学生も社会人風の人もノートや鉛筆には目もくれない
いっしょに良い匂いのする消しゴムや
綺麗な色の蛍光ペ ....
 
夕方の公園で男が一人
ブランコをこいでいる
くたびれた感じのスーツを着て
サラリーマンのようにも見えるけれど
首から上に頭は無い
代わりに
水の入った水槽が乗っかっている

水槽 ....
つぶやく、と、言葉が
僕をポケットにする
だから何でも入るし
ピアノだって上手に弾ける
ピアノを弾くと父はだんだん丸くなり
丸くなった背中を母が高く馬跳びする
着地したところはす ....
 
 
クラゲの夢の中で
わたしは一輪のタンポポでした
ぽかんと風に吹かれて
空を見上げているばかりでした
タンポポさん、と幼い声で
男の子が手を振ってくれました
わたしには振り返すた ....
 
 
雨上がりの軒下で
兄はひとり
シュレッダーになった
わたしは窓を開けて
要らなくなったものを渡す
最新式なのだろう
やわらかな音と振動で
兄は細断していく

ダイレクトメ ....
あおばさんのたもつさんおすすめリスト(714)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
冷奴- たもつ自由詩910-7-19
消しゴム- たもつ自由詩410-7-18
夏休み- たもつ自由詩910-7-16
独り言- たもつ自由詩210-7-13
嘘つき- たもつ自由詩810-7-12
花束- たもつ自由詩810-7-3
道の記憶- たもつ自由詩310-7-1
迷子- たもつ自由詩1310-6-29
ファイル- たもつ自由詩210-6-26
交差点- たもつ自由詩2510-6-23
湿った窓- たもつ自由詩710-6-19
白線- たもつ自由詩1110-6-12
抜け殻- たもつ自由詩2210-6-6
不在- たもつ自由詩6+*10-5-26
パリ- たもつ自由詩610-5-24
温度- たもつ自由詩1010-5-23
入口- たもつ自由詩810-5-15
夏の雲- たもつ自由詩22+*10-5-12
- たもつ自由詩1310-5-10
長電話- たもつ自由詩810-5-8
世界の果て- たもつ自由詩23+*10-4-30
降雪- たもつ自由詩610-4-11
童話(波音)- たもつ自由詩1210-4-10
童話(サボテン)- たもつ自由詩910-4-7
童話(おやすみなさい)- たもつ自由詩1710-4-5
文具店- たもつ自由詩710-4-3
- たもつ自由詩710-3-17
ポケット- たもつ自由詩1010-3-11
童話(タンポポ)- たもつ自由詩1010-3-9
名残- たもつ自由詩810-3-8

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